キッチンにおけるティーチングとコーチングの使い分け

”キッチンの人材育成にコーチングが大切なのは分かる。
でもコーチングだけでは人を育てられないんじゃないの?”

確かにキッチンではティーチング、コーチング、両方が必要な場面があります。
具体的にどうやって使い分けるのでしょうか?

ティーチングは相手の中にリソースがないことに関して

コーチングは相手のなかにあるリソース(今までの経験、知識、スキルなど)を引出すコミュニケーションスキルです。ですので、相手の中に答えがないものに対しては機能しません。例えば新卒の部下が触れたことのない料理技術や、知識を教える場合などはティーチングを使います。

また営業中にトラブルが起きた!など、スピードを求められる場合も、ティーチングが有効です。目の前に顧客がいる状態で”君はどう思う?”なんてやってる場合じゃないからです。

ティーチングは上司から部下への一方通行のコミュニケーションなので、時間が短くてすみます。ですが、これだけで人材育成を行うと、部下は考えるのを止めてしまいます。部下が受け身だと嘆くリーダーはティーチングだけをしていることが少なくありません。

ではコーチングはどういう場面で使うのか。
”部下がどんな未来を描きたいのか”にももちろん有効ですが、おそらくそれ以上にキッチンでは、トラブルが起こった後、失敗したときにこそ、コーチングが必要です。その時に何が起こっていたのかをきちんと把握して部下の可能性を引出し、次へとつなげることが出来るからです。コーチングの対話は10~15分もあれば可能です。ここをおろそかにすると、部下は同じようなミスを繰り返すことになります。

ティーチングによる会話例

では実際にキッチンで部下が失敗をしたときの会話例を、ティーチングで見てみましょう。

これなんか分離してない?なんで失敗したの?
いつも通りやったんですけど・・・・

でも分離してるでしょ。どうせまた楽しようと作業省いたんじゃない?
いや、そんなことないです・・・

もういいよ!もう一回見せるからちゃんと見とけよ!
(ほんとに、どいつもこいつも責任感がないんだから・・・)
はい、すみません。(どうせ何言っても聞いてくれないし・・・)

これでは部下は何が原因で失敗が起きたのかわかりません。同じ失敗を繰り返す可能性もありますし、またこの部下が新人を教えるようになったときにも、その理由を説明できないでしょう。人を育てられない職人を育ててしまうかもしれません。

コーチングによる会話例

ではコーチングによるアプローチではどうなるでしょうか?

これなんか分離してない?何があったの?
いつも通りにやったんですけど。

そうか、いつも通りにやったんだね。これどういう状態になってるのが理想なんだっけ?
なめらかに乳化している状態です。

うん、そうだね。じゃあ乳化させるのに大事なことって何だろうか?そこから考えられる原因は何かな?
う~ん、温度管理は大事だと思います。さっき実は仕込の途中で業者さんが来て、少し置いていたんですが、それが原因でしょうか?

もしかするとそうかもしれないね。他にもあるかな?
えっと・・・常温に卵を出していたんですが、温度の確認まではしていませんでした。

そうか。どうしたら良かったと思う?
温めなおして、ちゃんと温度を合わせるべきだったと思います。

うん、じゃあ次回は大丈夫そうかな?
はい!しっかり温度管理に注意してやります。すみませんでした。

”こんなやり取り、イチイチやっていられない!!”と思いましたか??

この会話のゴールは部下が乳化をできるようになることではなく、”考える”クセをつけることです。
自分で考えられる部下は強いです。一つ一つに答えをださなければいけないティーチングと違い、コーチングで部下の中にあるリソースが引き出されると、様々な状況で応用できるようになります。

例えば仕事の段取りなどは、学生時代の経験などにヒントが隠れていることもあります。そして職人としての経験が増えてくると、リソースとして使える部分ももちろん増えてきます。

コーチングによる対話を継続的に続けると、部下は”こういうときシェフなら何と言うだろうか?”と考えるようになります。そしてリーダーのところに届くのは、”失敗したんですがどうしたらいいですか?”ではなく、”トラブルがあったんですけど、〇〇かなと思いまして、△△で対処しました。”という報告に変わります。

コーチングは最初は時間が必要です。ですが部下の考える力が育ってくると、チームの成果が圧倒的に上がります。またその部下が将来リーダーになったときにも、同じように部下の可能性を引出せる人材になるでしょう。

 

あなたは時間を惜しんでティーチングだけを続けますか?
それともコーチングによるアプローチでチームを成長させて、未来の時間を得ますか?

 

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