部下との信頼関係を築くー部下に誠意を見せる

尊敬するシェフが言っていました。

良いチームでは、上司は自分より下の人間を見ている。
逆のチームでは、上司は自分より上の人間を見ている。

今回はシェフと若手との間にたつ上司についてのお話。

“私の責任です”とあなたは言える?

シェフとセカンドと新卒の私だけという東京の小さなパティスリーにいたときのこと。
もう内容は良く覚えてないけれど、シェフにひどく怒られたことがありました。材料が無駄になった後だったので、早く計りなおせよ、どうすんだよ、とシェフの怒りは収まらない。と、そこで倉庫から返ってきて、状況を理解したセカンドがシェフにこういったんです。

”違うんです。それは私がきちんと指示出来ていなかったのが悪いので、私の責任です。すみませんでした。”

シェフはセカンドをとても信頼していたので、”そうなの?ちゃんと言っといてよ。”と言ったっきり、どこかへ行ってしまいました。

どう考えても私が悪かったので、セカンドに”すみません。。”と謝る私。そうすると返ってきたのは”ううん、違うの。ちゃんと見てなかった私も悪いから。次から気を付けようね”という言葉でした。

私がこのとき一緒に働いていたセカンドはすごくまっすぐで、自分が間違えた時にはちゃんと”ごめんね”と言える人。またシェフの怒りが私に向くときには”自分の管理責任だから”と、間に割って入り、シェフが彼女を飛び越えて私に直接注意をしないようにしていました。

今考えると”自分の管理ができていなかった”を認めることって、自分の評価を下げることにつながるかもしれないんですよね。でも彼女はシェフからの評価を気にして仕事をしておらず、常にどうしたらチームがうまく回るか、良いものをお客様に提供できるか、という視点で仕事をしていたのです。

このときのセカンドのことは、転職をするたびに私の脳裏によみがえることになります。
何故かというと、それ以降〝きちんと謝れない人”にはたくさん会ったけど、彼女と同じことをできる上司にほぼ出会わなかったから。

沈黙は誰を守るためか

シェフはセカンド、セカンドは三番手、そしてその下、と順番に責任をもって育てていれば、一人が見ている範囲は少なくて済みます。逆にシェフが一番下のスタッフなど、間にいる職人を飛び越えて叱るということが常習化すると、キッチン内のバランスが崩れてしまう。上司が部下をきちんと見なくなります。

一番上のシェフがチーム全員を注意しているようなチームにいくと、シェフが怒って”誰がやったんだよ”となると、皆黙ることが多い。その日休みのスタッフの所為になったり、実はやっていない一番下の部下のせいになったり、まあ色々です。

もっとひどいのは”あいつがこんな失敗やったんですよ。”と部下のミスをシェフに報告するパターン。そうすると段々皆ミスを隠すようになったりするんですよね。失敗した食材を言わずに捨てたりとか。

”シェフの怒りが倍増しないように”と、その場を丸く収めるために皆が黙るケースもあるんですが(嵐が去るのを待つパターン)、理不尽に怒られた部下の評価は下がったままです。自分の管理責任である、と認めることが、なぜこんなにも難しくなっちゃうのだろう。

上司が部下を守れないのは、本当は自分の評価を守りたいからで、シェフから自分がどう見られているかを気にしています。見ているのは、自分の部下ではなく上司であるシェフ。

あなたが誠実なら、部下も誠実であろうとする

ミスを謝ることができない上司の下では、部下はミスを隠したり言い訳したりするようになります。自分を守ってくれる存在がいないので、どうやったら怒られないで済むか、と顧客ではなく上司やシェフを見て仕事をするようになります。そしてこういうチームでは、上司はシェフの評価を、シェフはもっと上の総料理長や会社の評価を気にしていたりします。

冒頭のセカンドと一緒に働いていたとき、私は本当に彼女を尊敬していました。彼女がいつも私に対してまっすぐだったので、私も彼女の期待に応えようと21歳なりにめちゃくちゃ考えて仕事をしました。
失敗したときには、”すみませんでした。”とすぐに報告に行きましたし、どうやったらたくさんの仕事を抱えている彼女をサポートできるかを、いつも考えていました。
彼女がいつも私を守ってくれていたので、私は自分を守ることを考える必要がなく、隠したりごまかしたりしないですんだのです。まっすぐに、どうしたらチームがうまく回るか、もっと良いものが提供できるか、つまりセカンドと同じような視点で仕事をすることができました。

部下は守るべき存在です。
安心して仕事と顧客に向かえる環境をつくるのが、上司の仕事です。

私は自分が上司になったときも、彼女と同じようにふるまいました。自分の部下が上のシェフから叱られるときには、”私の管理責任です”と割って入りました。もちろん、何があったかを把握し、同じことが起こらないように部下と話しますが、それは私がするべきことであって、料理長とすることではありません。

また理不尽に部下に怒りの矛先が向くときも、やっぱり間に入りに行きました。上司を持ち上げる、とかもしなかったので一部の上司からあまり好かれませんでしたが(笑)、そういうときはいつも、もう一つ上の上司が私を評価してくれました。

つまり、部下に対して誠実だったから会社での評価があがらなかった、という経験は一度もないのです。それどころか、”私の仕事が少しでも楽になるように”と頑張ってくれる部下にたくさん恵まれました。

 

あなたの持っている誠実さは部下の未来を変えるかもしれません。
引き継がれるのは料理の技術だけではないのだから。