キッチンの業務分担は”足し算”ではなく”引き算”で

”業務分担を見直す”

元々たくさんの仕事を抱えているシェフやリーダーにとっては悩ましいところですよね。
減らしたい気持ちは山々だけど、任せられる人材がいない。

そもそもチームのトップの仕事を減らすことで、何が得られるのでしょうか??

日本人のルーツは”引き算”

一般的にフレンチなどの洋食では足し算をします。”スパイスを足す””ソースを足す”などなど。フランス内陸部などで、新鮮な魚などの食材を手に入れることが難しかった時代の名残でしょう。
それに対して和食はもっぱら引き算。”臭みを引く””だしを引く”。そこには無駄なものをそぎ落として”素材の良さを引出す”という意図があります。とことんシンプル。しかも隠すものがないから、職人の質が顕著に料理に表れる。

私は主にフレンチのデザートをつくっていましたが、一緒に働いていたシェフの影響で引き算で創作をするようになりました。というのも働き始めた頃に言われた、

”足し算しすぎると何食べさせたいのか分かんなくなるでしょ?”

という言葉が心に残っているから。

例えば私のデザートは、いつも一色のグラデーションか二色のコントラストで構成されることが多いです。”色”を引くと、食材の質感が浮き上がって見えるから面白い。試作の時はいつも、”このパーツは本当に必要かどうか”という目線でみていました。

日本人のDNA的には引き算のほうが得意なはずだから、仕上がる料理の一皿にも凛とした日本的な雰囲気が漂うように思います。それぞれの素材の良さが引き出されているようなイメージ。

”自分がいないとキッチンが回らない”はマネジメント失敗

とはいえ、キッチンの業務を分担するフェーズになると足し算で考える人が多いように思います。

業務のリストを並べて”どの仕事を自分(シェフ)がやるか”という発想です。このアプローチは”いや、これも自分がやっといたほうがいいよな。”となりがちで、結果的に大量の業務がシェフのもとに残ってしまう。

因みに部下に仕事を任せないと、相手の成長の機会を奪うことにもなります。足し算の料理で時々、本来の良さが隠れてしまっている素材を見つけることがありますが、まさにそれと同じ状態。そう考えると、お皿の上にのっているのは本当にチームの姿そのもの。

キッチンのマネジメントの目的のひとつは”自分がいなくても回るチーム”をつくることです。シェフがお客様のところに挨拶にでてくるお店とそうでないお店は印象が変わる。前者はそのシェフの後ろに”安心して任せられるチーム”があるということだから、クオリティにも信頼感がもてます。

業務のなかで”何をやらないか”を決める

実際に業務分担に引き算を使うには、”部下に何を任せるか”=自分は何をやらないかを決めます。
ここでのポイントは最初から自分と同じクオリティを求めないこと。普段部下に仕事を任せられない人はどうもここで引っ掛かることが多いみたいですね。

判断の基準は、

1 顧客満足を得られるレベル感へたどりつくポテンシャルの有無
2 そこから生まれる結果に自分が責任を持てるかどうか

②はけっこう肝になる考えです。”任せる”ということは”放置”とは違います。”任せたけどやってない。””任せたけどレベルが低くて使い物にならない”、これはただの放置プレイ。どちらかというと、フォローアップを怠った側に責任があります。そういう意味でどの仕事を誰に渡すか、つまり①はとっても重要。

一度やってみるとわかるのですが、ここで腹をくくれると大部分の仕事は部下に任せられます。部下の意外な才能を発掘できることもよくあります

それから”あまり仕事を渡しすぎると可哀そうだから”というリーダーの方は、部下の中にはたくさんの仕事を効率よく回すことが好き(しかも得意というタイプの人がいることもお忘れなく。あくまでも本人に決めさせます。そして自分自身と約束した言葉には責任を持ってチャレンジしてもらう。その上で一杯一杯になっているようなら、部下と相談して業務を引くことを考えます。

 

シェフやリーダーにしか出来ない仕事の比重をできるだけ軽くするのは、あなたが職人としての本領を発揮できるようにするためです。部下に仕事を任せると、新しい料理を試作したり、生産者とつながったり、他のことを入れるスペースが生まれる。あなたが輝くと、その影響で部下を含めたあなたのチームも輝き始めます。

 

”何をやらないか”を勇気をもって決めよう。
あなたらしさを表現するために。