キッチンを組織する”上手くいかない時はアプローチを変える”

人材育成や、チームビルディングが、なかなか進歩しないように感じるときは、視野がとても狭くなっていることが多いです。

世界を広げるには、まず相手の視点を知ること。

一番良さを引出せるアプローチを考える

私は夏のデザートにハーブを使うのがとても好きです。
特にラベンダーの香り。時期的にもすごく短い期間しか咲かないので、季節を表現するにはぴったり。

ハーブの香りを抽出するには、液体を沸かしてハーブを入れ、ラップをすることで、香りの要素を液体に閉じ込めますが、ラベンダーはえぐみが少しでます。それならと抽出時間を短くすると、香りも頼りなくなってしまう。

以前ハーブ農家さんから直接ハーブを仕入れていたときに、生産者のかたがハーブのスペシャリスト、というか学校をされている人で、”これは専門家に直接聞こう”と思って、どうしたらいいか尋ねてみました。
すると、こんな答えが返ってきました。
”ラベンダーは確かに熱い液体だと香りはたちますが、えぐみがかなり出ますね。私の場合は冷たい液体にラベンダーを入れて1週間ほど寝かせます。ま、でもこれはキッチンでは現実的じゃないですかね(笑)”

実際に一度冷たい液体で抽出してみたのですが、やはりレストランのオペレーションにのせるのが難しく、私個人としては香りがもう少し欲しいイメージでした。
そこで、熱すぎるのがラベンダーは嫌いなんだろうから、そもそも抽出する液体の温度を下げていって、えぐみが出ないベストの温度が分かればいいはず、と仮説を立ててみました。
一度沸かした液体を少しおいて、90℃、85℃、80℃、と下げていく。結果80℃以下で30分抽出すると、えぐみが出ないことがわかりました。

一方で、ラベンダーの香りを引き立たせるために、グラニテには柑橘などを一切加えずにシンプルな味にしたいと思っていたのですが、グラニュー糖を使うと、とても淡泊な味に感じる。そこで、本来フルーツの味や香りを引き立たせる果糖(フルーツシュガー)を代わりに使ったら、シンプルでそれでいてすっきりとした甘味のグラニテに仕上がったのです。糖度が下がる分、グラニテのサラサラ度合も完璧。

口の中に入れた瞬間、ふわりと香るラベンダーの香り。

そのアプローチは、その部下に本当に合っている?

人材育成につまづくときは、アプローチがそもそも相手に合っていないことが良くあります。
でもやり方はお料理を作るときと同じで、どうすれば相手の良さを引き出せるか、です。

例えば抜け漏れが多い部下に対して、チェックリストを使うように指示するとします。
でも、抜け漏れがなくならないので、チェックリストのチェックリストをつくったり。”ちゃんとチェックリスト使えよ!”と言ってみる。
これは相手の良さが引き出されないのに、何度も100℃の液体にラベンダーを入れて”なんでエぐみが出ちゃうんだろう??”と言っているようなものです。

万人に通じるアプローチ、というのは基本存在しないと私は思っています。同じチェックリストを使うにしても、カスタマイズする必要がありますし、もしかするとチェックリスト自体が、その部下に合っていないかもしれません。

コーチングをベースに考えると、ここでのポイントは2つ。
①チェックリストを使うことは目的ではない。
②過去の成功体験を引出す。

①はよくあるケースで、”チェックリストを使って抜け漏れを無くす”ことが手段から目的にすり替わってしまうパターン。本来の目的は、例えば”抜け漏れを無くすことで料理のクオリティを上げる”とか、”もう一歩上のステージで活躍してほしい”とか、その先のゴールがありますよね。
ということは目的を達成するための手法は、チェックリストでなくてもいいはずだし、上司と部下の間で目指すゴールが共有されていることはとても大事。

そして②の登場なのですが、コーチングでは相手の過去の成功体験と今を紐づけて、行動に起こします。勉強でもスポーツでも、部下が過去にどのように”学び”を得ていたのか、という情報が、今どうやって学びにつなげるかに大いに役立ちます。教科書から学ぶ人もいれば、文章を読むとさっぱり頭に入ってこず、先生の話から学ぶことが多かったという人もいます。それぞれ学びの成功パターンが違います。

人材育成の現場でコーチングが重宝されるのは、”自分から生まれた答えに人は3倍コミットする”というデータがあるからです。抜け漏れがあったときに、シェフから”お前チェックリストつくれよ。”と言われるのと、スタッフ自身が”自分でチェックリストを作ってみます。”、”ホワイトボードで今日の業務を共有できるようにします”と言うのでは、行動が実際に起きるのに3倍差が出るということ。

 

良い料理人は、素材の良さをどうやったら引き出せるかよく知っています。
部下はあなたの料理を再現するのになくてはならない存在。スタッフの良さが引出せれば、料理のクオリティが上がります。

あなたは素材の良さを引き出すために、どんなアプローチをしますか??