時間管理のできる部下を育てるには

”え、ここまで仕込んでくれるって言ってたのに!”

休み明けに、キッチンでよく見る光景ですね。
時間が足りなくてできませんでした、よろしくお願いします。的なメッセージと共に(笑)

部下が時間管理が出来なくて、という話よく聞きます。
どうしたら責任感をもって時間通りに仕事を終わらせることができるようになるのでしょうか?

プロは約束した時間を守る

”時間通りに終われるかどうかは、終わりたいって思っているかどうかの差だ。”
と以前一緒に働いた料理人が言っていましたが、これ根性論のようで、とてもよく的を得ていると思うんです。

私がフランスで働いていたショコラトゥリーは基本が6:00~13:00の7時間労働でした。
お客さんの入り方次第で毎日仕込の量は変わりますが、終了時間はほぼブレません。
”え!こんなに終われる??”ていうぐらいの無茶な仕込でも、意地でも13時に終わらせます。

私が一緒に働いたフランス人の職人達の頭の中には、そもそも残業するという選択肢がありません。
つまり何が起こるかというと、限られた時間のなかでどうやって仕込を回したら終われるかめっちゃ考えるわけです。オーブンに生地をどの順番で入れると無駄がないか、どのスタッフにどの仕事を回すか、どのタイミングで洗い物をするか、何時に掃除に取り掛かるか。全部計算されていますし、それが彼らの当たり前でした。

日本に帰国してまず最初に驚いたのは、仕事が多くて終わらなければ残業すればいい、という職人がまだまだたくさんいたこと。大きな意識の差でした。
そもそも時間通りに終わる!という意識で仕事をしていないのに、終わるはずもない。

私はブライダルで仕事をしていましたが、披露宴は会場を1日に2回転させたりする都合上、時間にかなりシビアです。コース料理を出すときも分刻みで、仕上がり時間を調整しています。
普段から時間通りに仕事をすることを意識している職人は、やっぱり時間どおりにバチッと料理が仕上がります。見ていて気持ちがいいぐらいに。
逆に時間管理が苦手なスタッフだと、”その時間でいけます!”と言ったものの、パーツが足りなかったり。なんやかんやで間に合わないことが多く、他のスタッフをヒヤヒヤさせる。

この二つのタイプの間には圧倒的な信用の差が生まれます。

”この時間に終わらせます””ここまで仕込をしておきます”、約束した言葉を守れるかどうかで、どれだけ仕事を任せてもらえるかも変わってきます。部下の将来を考えても、早めにクリアしておきたい課題ですよね。

まかないを最初に食べるか、最後に食べるか

時間への意識の差は、まかないの時間にも表れます。
色んなキッチンを見てきましたが、生産性の高いチームは総じてまかないを食べるのが早い。逆に生産性が低い、時間通りに仕事が終わらないチームはなかなかまかないを食べません。あともう少し、あとここまでやってから・・・。

面白いと思いませんか?働いている時間は同じ。どこにまかないを組み込んでいるかの差なのです。
ですが前者は何かにつけて先手を打っている感があります。

思うに、生産性の高いチームはそもそもまかないを段取りのなかに組み込んでいます。できたら温かいうちにさくっと食べて、さくっと仕事に戻る。

対して生産性の低いチームはまかないが段取りの外にあります。おそらく洗い物や掃除も外でしょう。計算にはいっていない分、仕事が後ろ倒しになる。

またチームのリーダーがスタッフに及ぼす影響を考えると、シェフが背中で時間をきっちり管理することを見せているチームは強いです。生産性の高いチームのシェフは一番乗りでまかないを食べ始めます。何故ならシェフに気を使って部下たちが食べないのを知っているから。

終業時間に関しても同じです。一番に仕事を終わらせて無言のプレッシャーを周りに与える。(あ、因みにシェフが帰ってからこっそり仕込を再開する、というのは仕事以前の信頼関係の問題ですね。)

一日ではなく、一週間の予定をたてる

とはいえ、プロは時間を意識するもんだ!と言ってみたところで、部下が出来るようになるわけではありませんね。
部下が時間を意識できるようになるには具体的に何をすればいいのでしょう?
それは時間軸を伸ばすこと

時間管理のできない部下でありがちなのが、いっぱいいっぱいでその日一日しか見ていない、というケースです。次の日の仕込みを考えるときに見ているのは”明日の営業分があるかどうか”。もし次の日の分が足りていればその場はOK、そして次の日にもう一度明日の営業分があるかどうか、を考えます。在庫を毎日チェックし直す作業も無駄ですが、仕込みの直前にしか予定が分からないので、食材の発注が間に合わなかったり、とスタートダッシュも遅れます。

時間管理が苦手な部下は総じて時間軸が短いです。休憩前まで、とか今日の仕事、とか目前の状況しか見えていません。
時間軸を伸ばすためには仕込の段取りを一週間またはそれ以上のスパンでつくるようにします。

これはブライダルではお馴染みなのですが、週末に向けて仕込の段取りを組むので予定表は最低でも一週間単位。スタッフの休みを回すことや食材の納品日を考えると、2週間のスパンで仕込を見るとかなり余裕が生まれる。部下にも同じようにしてもらっていたら、自然と彼らの時間軸も長くなり、食材の発注の遅れや、特定の日にやたら仕込が集中することが無くなりました。

レストランの場合は、在庫を見るときに”明日の分があるかどうか”ではなく、”どの営業まで持つか”を見るようにします。そして週間予定表に次の仕込みの日をその場で書き込む。そうするといつ食材の発注をかければいいかも分かるし、仕込量のバランスもとりやすくなります。お客様の入り方で実際にその日に仕込むかどうかは微調整すればいい。

実際にこの手法で、なかなか仕込の段取りができなかった新卒のスタッフが、たった1年で完全に婚礼のデザートの全仕込みを任せられるようになりました。

 

 

私たちは目の前のことができない部下に対して、つい低めの目標をクリアすることに固執してしまいます。”まずはこれが出来るようになってから。”と。もちろん技術的なことは一歩ずつ着実に進んだほうがいいのですが、時間管理などはもっと先にゴール設定をすることで、通過点として一日の段取りが自然とできるようになります。