世界には常に二面性がある
「冷静と情熱のあいだ」という映画があります。2001年に公開され、竹野内豊とケリー・チャンがW主演をつとめ、エンヤの楽曲を使用したことでも話題になった作品です。この映画は元々は、江國香織と辻仁成の小説から生まれました。ひとつの恋愛を男性と女性、それぞれの視点から描くというユニークな手法で。
主人公の阿形順正は大学であおいと出会い恋に落ちます。兄妹のように何をするのも一緒、幸せな日々を送る二人。ところがあおいの妊娠によってそんな二人の関係は急に終わりを告げるのです。
「10年後にイタリアのフィレンツェのドゥオーモで会おう」仲の良かった頃に交わした約束を胸に抱きながらも、それぞれ別々の人との人生を歩み始める順正とあおい。もう交錯することがないかのように見えた二人の道でしたが、数年後、大学時代の友人との再会によって、順正はあおいの妊娠に関する真実を知ることになります。
「君がどんな思いでいたかも知らないで、僕は・・・」順正は自分の素直な気持ちを手紙に綴って、イタリアに住むあおいに送ります。関係をやり直すためではなく、ただその時のことを、自分の幼さを、あおいに謝るために。
一方で、順正から届いた手紙をそらで言えるぐらいに繰り返し読み、やっと決心して遠く離れた東京に電話をかけるあおい。電話の向こうから聞こえる呼び出し音。一回、二回、”もしもし?”。懐かしい順正の声を聞いた瞬間、あおいは思わず電話を切ってしまう・・・。
この物語が面白いのは、ある出来事が起こったときに、その裏側で何が起きていたかが分かるところ。例えば上のイタリアにいるあおいからの電話のシーン。順正はそれがあおいだと感づくのですが、何故彼女が話さなかったのかも、彼女がどんな思いでダイヤルを回し受話器を置いたかも分からない。
小説は元々は、辻仁成と江國香織が手紙をやりとりするように交互に書いた連載を本にしたものなので、同じ瞬間に相手側でどんな心の動きがあったのかが見えるような構成になっています。
人がすれ違う時、というのは、相手の視点を想像できないからなのかもしれません。相手の立場にたって考える、と言ったりしますが、私たちは大抵、自分の位置から相手の視点を想像している。真実はしばしば、目には見えないのに。
人の視野は頑張っても180度ほど。物事を360度から眺めるためには、私たちはどうやら誰かの視点を必要とするようです。
POINTS OF YOU®で相手と同じ絵を見ることを体感する
POINTS OF YOU®が大切にしているコンセプトの一つに「Big Baloon Concept(ビッグバルーンコンセプト)があります。部屋のなかに天井まで届く大きな大きな風船があって、その両側に立っている人が「赤い風船が目の前を塞いでいる」「いや、赤じゃなくて青い風船だよ」と言い合う。この風船真ん中から赤と青、二つの色になっているのです。
これ、現実世界で起こっていることと似ていますね。
「なんでそんなことやったの!?」
「あなたに言ってもきっと分からない。」
相手からはこちらの景色が見えないことを分かっているから、説明することすら諦めてしまうことがある。もしくは「絶対に赤なのに!」と自分から見えている景色が正解だと思い込む。
では風船の周りをまわって、相手が見ている景色を見るにはどうしたらいいのでしょう?
POINTS OF YOUを使ったワークショップや講座では、1枚の写真カードを見て相手と対話します。文字通り、同じ絵を見ながら話をするのです。相手が持っている視点、解釈の仕方にビックリします。見ているものは同じでも、見方が人の数だけ違うということを、リアルに体感できる。
相手の視点を認めることは、自分の視点を取り下げたりすることではありません。私達は別の景色が見えている、という真実を、ただ受け止めるだけ。
もし写真カードが無かったとしても、相手と自分の可能性を信じて「私にはこんな風に見えている」と話し始めることで、私たちはお互いの視点を理解できるのかもしれません。人と人の対話はそんな風に始まります。あなた自身が、心を開くところから。