チームをデザインする、料理をデザインするように。

”この間入った新人がもう辞めてしまった。”
”若手がなかなか育たない。”

料理の世界はいつも人材不足と隣り合わせ。昔はシェフの背中をみて貪欲に学ぶ職人がけっこういたのに、どうも最近の若い子達は様子が違う。

私自身も、ある企業のシェフパティシエとして働いていたとき、チームをマネジメントすることと、デザートの創作を同時にすることがとても難しくて、”あ~、創作に集中させてくれないかな、ホント・・”と感じていた時期がありました。

今、国内外の著名なシェフの中にも、インタビューで”スタッフの育成にはコーチングが必要”と答える方が増えてきています。
従来のTeaching(やり方を全部教える)ではなく、Coaching(目標達成のために必要な能力を引き出すコミュニケーションのスキル)で相手の可能性を引出す手法が、人材不足を解消するための手段になるというのです。でもコーチングってなんだか難しそう??

コーチングを始めてからひとつ、私の中でつながったことがあります。
それは”料理を作ること”と”チームをつくる”ことの間には、びっくりするぐらいの類似点があるということ。
キッチンにコーチングを取り入れるとどんな変化が起こるのでしょうか?

1 料理の完成図を描く チームの理想図を描く

新しい料理やデザートをつくるとき、イメージをデッサンする人がほとんどなのではないでしょうか?例えば春の芽吹きをイメージして全体を緑に、ここにソースで花が咲くような感じで。
完成図があるのでスタッフもそこからイメージして、シェフの作り上げたいデザインに近づけようとしますよね。

ではチームの理想図のデザイン、してるでしょうか??どんなチームにしたいか、スタッフにどう成長してほしいか、明確なデッサンを描いて、スタッフに共有していますか??
完成図をイメージしないまま料理を創作すると迷走するように、チームもまた”どこに向かっているか”をスタッフやリーダー自身が分かっていない状態では、理想に中々近づけません。

目標(ゴール)はコーチングでは”弓を射る的”に例えられます。ゆらゆら動いていたり、中心がぼんやりしていたら、当たるものも当たりません。
料理のデザインぐらい、明確でカラフルなチームのデザインがあれば、チーム作りは加速します。

2 料理の世界×コーチング

料理の完成図を描いた後、創作に必要な要素の一つは”素材を知っている”ことだと思います。野菜の特徴やクセ、魚の扱い方。パティシエならチョコレートや生クリームの性質、水分を嫌う、温度変化が苦手など。

チームにおける素材はスタッフです。スタッフ一人ひとりの特徴を知っていることは、チームをつくる上でとても重要です。そして料理と同様、”素材の良さを引き出す”ということも。

あるキッチンで落ちこぼれだったスタッフが、別のシェフの元で急に花開くということは、よくあるケースです。それはきっとそのシェフが、見えない才能を信じてどうしたら良さを引出せるか、考えたから。なんだか、初めにエスカルゴを食べようと思った料理人の感覚にも似てますね(笑)

そして最後にお皿の上に全ての素材をのせて”バランスをとる”季節で素材が入れ替わることもありますし、同じ素材でも状態が変わることがあります。微調整をして、そのときのベストを作り上げる。
常に良いものを提供できるようなチームのバランスを考える。その姿勢が理想のチームを生み出します。

3 考えられるスタッフを育てる

キッチンの人材育成にコーチングを取り入れる最大のメリットは、スタッフの考える力が育つ点です。
Teaching(やり方を全部教える)は短期で即戦力になってもらうには有効ですし、スタッフが知らない技術を教えるときなど場面によっては使い分ける必要があります。ただ、Teachingばかりで答えをいつも上が持っていると、スタッフは考えるのを止めてしまいます。”これはどうしたらいいですか?”、と全て上司任せ、受け身になってしまう。

キッチンの仕事はイレギュラーも多く発生するので、スタッフの考える力が育っていないと、そのたびにリーダーであるシェフはキッチンに張り付くことになります。

コーチングを使った育成方法でスタッフの考える力が育つと、チームは自走できるようになります。そしてこの育成方法は今のチームだけでなく、スタッフの未来にとっても価値があります自分で考えられるスタッフは、どんなチームにいっても重宝されます。可能性がぐっと広がる。

不思議なことにチームがしっかり育つと、スタッフはリーダーが創作の時間を取れるように自分たちで色んなことを始めます。そうするとリーダーは”料理を創作する”という職人としての本来の仕事に、今までよりたくさんの時間をさけるようになります。

4 シェフ×ストレングスファインダー®

私はコーチングに米国のGallup社のストレングスファインダー®というツールを取り入れています。その理由は”自分らしさ=強みを表現できるようになる”から。

スタッフの強みを知る、という点でも有効なツールですが、それよりもリーダー自身が強みをより深く理解して使いこなせるようになる点が面白い。もちろん職人としての強みは日々お客様などから聞いていると思うのですが、”人としての強み”って意外と気づいていなかったりします。

コミュニケーションが苦手だという料理人やパティシエのかたはけっこう多いのですが、ストレングスファインダー®を受けると、その才能は眠っているだけで実は持っている、ということが分かります。
自分らしいやり方が見つかると、もともと料理をつくる=チームをつくる、が似ているだけに、チーム内の人間関係がずっと容易になります。

”こうあるべき”リーダー像、ではなく、”もっとも自分らしい”リーダー像を見つけることが、自分の強みを発揮する一番の近道です。因みに最近わかってきたのですが、ストレングスファインダー®で見える”自分らしさ”は、創作する一皿の上にもよく表れています。これ、リンクさせるとさらに面白いかもしれません。

ストレングスファインダー®の5つの魅力

 

5 チームと料理の物語

コーチングはコミュニケーションのツールとも呼ばれるように、取り入れるとチーム内の人間関係に大きな変化があります。シェフとスタッフ、スタッフとスタッフの間に繋がりが生まれ、ストーリーが生まれる。

美味しい料理は顧客を感動させますが、さらに心が動く瞬間は、料理の向こうにチームの繋がりが見えたときなのかもしれません。順風満帆ではなく、いろんなものを乗り越えてきたストーリーが見えた時、その料理やデザートそのものよりも、その空間にいる時間に価値を感じたりします。

お皿のうえに乗っているのは、あなたのチームです
景色を切り取ったストーリーや生産者の想いだけでなく、チームの物語がそこに加わったとき、その料理が一番輝くのかもしれません。

 

チームをつくるためのコーチングは、料理ととっても似ています。
つまり、料理を創ることができる=チームをつくることができる、だと私は考えています。

もしまだ出来ていないとしても、それは“How(どうやって)”を知らないだけ。
さあ、あなたのチームの物語を描き始めましょう!

ストレングスコーチングを受けた料理人&パティシエの声 コーチングってそもそも何?