【10/19(土)】Re:Book~ひとつの物語から始まる対話の空間~「不確実性(Uncertainty)」

繫がりを、つくる ~Here we are, in the same space ~

シェフシャウエンの青い町の朝

「My point of view」は、旅先で出会ったことや日々の生活で気づいたことなど、私の世界の捉え方をエッセイ調で綴ったシリーズです。


シェフシャウエンは朝が綺麗だ。

イスラム教のお祈りアザーンが聞こえてくるのは、夜明け前の4時半。人々は一度起きてお祈りしたあと二度寝をするらしくて、モロッコの朝は意外と遅い。

朝7時でも町中に人影はほとんどなく、出会うのは猫か、地元特産の乳製品を配達する車ぐらい。観光客向けのお店も軒並み閉まっているから、昼間の色とりどりのお土産が青い壁を飾る風景とは違って、青のグラデーションがより一層引き立つ。

そこから30分もすると仕事に向かう地元の人が少しずつ現れ始める。シュラバと呼ばれる魔法使いのようなモロッコ衣装を着こなして、颯爽と歩いていく姿はまるでファンタジーの世界のよう。

完全に町の風景に溶け込んでいる彼らと違って、自分がここでは「異質な存在」であるという感覚を覚える。地理的な理由もあって、欧米の旅行客と比べれば圧倒的にアジア人の数は少ないし、もちろんこんな朝早くから歩いているのはわたしぐらい。

魔法使いたちは、ほとんど目も合わせずに横を通り過ぎていく。

ちょっと躊躇いながら、けれども心を込めて、すれ違うたびに「ボンジュール、マダム/ムシュー」と微笑みかけてみる。すると皆、少し驚きながらも「サヴァ(元気)?」「ビヤンブニュ(ようこそ)」とフランス語で返してくれた。

シェフシャウエンは観光地ではあるけれど、青い扉の向こうにはいたって普通に暮らしている人達がいる。観光が主な収入源なので友好的な人が多い一方で、挨拶もせずに写真を撮りまくる観光客をよく思ってない人だっている。

フランスもそうだったけれど、モロッコもまた挨拶を大事にしている国のひとつだ。シャウエンのような小さな町では町中ほとんど知り合いのようなものだから、互いに握手をしたり頬にキスをしたりしている光景もよく見かける。

なのでアイコンタクトと挨拶は、「その場所との繋がり」をつくるためには欠かせない。観光客相手に英語も話す彼らだけど、馴染みがあるのはフランス語。さらに片言でもアラブ語を使えば、もっと喜んでくれる。

ただ雰囲気や景色を楽しむ、そういう旅もあると思う。同じ空間にいながらも、まるで相手がいないかのように過ごすことだって出来る。一人じゃなく誰かと旅をするときや、グループで旅するときは余計に、その場所との繫がりなんて気にかけなくなってしまうこともある。

でもたったひとつの「ボンジュール(こんにちは)」という言葉から繫がりが出来て、そこから会話が広がっていくのって素敵だと思うのだ。

ここで生まれたのかとか、この町のどこが好きかとか、将来どうなりたいのかとか。日本にいたら決して会うはずの無かった人たちの人生に、ほんの少しだけ触れられる瞬間がたまらなく好きだから。

なんというか、わたしは旅を通して「その土地の人が何を思い、どんなことを大切にして生きているのか」、知りたいみたいだ。

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