「My point of view」は、旅先で出会ったことや日々の生活で気づいたことなど、私の世界の捉え方をエッセイ調で綴ったシリーズです。
旅をしていて一番楽しいのは「出会い」だと思う。
エクス・アン・プロヴァンスの町中を歩いていたら、ふと看板が目にとまって入ったレストラン。「タルティーヌ専門」という、ちょっと風変わりなお店なのだけど、扉を抜けた先の中庭に注ぐ太陽が心地よい。
南フランスらしく、冷たい白ワインを飲みながら、のんびり料理を待つ。
30分ほど経っただろうか。スモークサーモンとクリームチーズに林檎を合わせた料理がテーブルに運ばれてきたときには、思わず微笑んでしまった。
私の感性にドンピシャの一皿。見た目も素敵だけど、味もメチャメチャ好み。
帰り際、笑顔の素敵なマダムに「エクスで食べた食事の中で一番素敵だった。とても綺麗で、美味しくて、繊細で。もしかしてシェフは女性?」と尋ねると、
「私の娘がシェフなのよ」と誇らしげに微笑んだ。
南フランスの人達は本当に気さく。
「どこから来たの?」
「勉強?バカンス?」
「素敵な旅にしてね」
「もう帰っちゃうの?またエクスに戻ってこなきゃ」
とっても親しげに話しかけてくる。
そして共通してるのは、皆「自分がやっていることを好き」なこと。
市場でひまわりを売っているお兄さんも、教会をガイドしてくれたおばあちゃんも、息子が日本に留学している石鹸屋のおじさんも。皆エクス・アン・プロヴァンスという町が好きで、自分のやっていることが好きで、とっても活き活きして見える。
好きなことを仕事にしたのか、やっている仕事を好きになったのか、真相は分からないけれど。
彼らには少なくとも「この人生を愛する力」がある。
素敵な出会いはいつも、予期せぬときに起こる。そんな風に思っていたけれど。本当のところは、自分が「いいな、こんな生き方をしたいな」そう思った人に惹きつけられて、出会いが生まれるのかもしれない。