【9/28(日)】Re:Book~ひとつの物語から始まるチームの対話空間~「架け橋(Bridge)」

アーキタイプとは何か?~人は人と出会い、共鳴することで成長する~

アーキタイプとは?

アーキタイプ(archetype)」とは、スイスの心理学者カール・ユングが提唱した概念です。日本語では「元型(げんけい)」と呼ばれ、人々の中に存在する普遍的なイメージやパターンのことを指します。

例えば世界を救う「ヒーロー」や、敵対する「悪役」、またヒーローを支える「助言者」など。大昔から現在に至るまで、様々な国の神話や物語に繰り返し登場することから、人の無意識の中には共通したイメージがあるとされています。

アーキタイプと「英雄の旅」

アーキタイプをより理解するには、「英雄の旅(ヒーローズジャーニー)」についても知っておくとよいでしょう。

これは神話学者ジョゼフ・キャンベルが提唱した法則で、どの文化の物語にも共通して現れる典型的なストーリー展開や登場人物のパターンを示しています

たとえば『ハリー・ポッター』や『スター・ウォーズ』といったファンタジーやSF映画、『千と千尋の神隠し』や『鬼滅の刃』などのアニメにも、この「英雄の旅」と通じるテーマが見られます。

主人公は様々な理由から旅を始め、仲間や助言者と出会いながら成長していきます。道中では困難にぶつかり、心が折れそうになる瞬間もありますが、それを乗り越えて悪に打ち勝ち、やがて始まりの場所へと帰還します。

この一連の流れの中で登場する多様なキャラクターたちもまた、それぞれがアーキタイプ(元型)を象徴しているのです。

▼「英雄の旅」を分かりやすく解説:映画「ファインディング・ジョー 英雄の法則」

ファインディング・ジョー英雄の法則/QuestCafe

12種類のアーキタイプ

一般的に広く知られているアーキタイプは、キャロル・S・ピアソンが著書「英雄の旅 ヒーローズ・ジャーニー 12のアーキタイプを知り、人生と世界を変える」の中で紹介している、12種類です。

  • 幼子(Innocent)= 純粋・信頼・楽観
  • 孤児(Orphan)= 共感・現実主義・つながり
  • 戦士(Warrior)= 勇気・達成・目標志向
  • 援助者(Caregiver)= 思いやり・保護・奉仕
  • 探求者(Seeker)= 自由・冒険・自己発見
  • 反逆者(Rebel)= 革新・変化・挑戦
  • 求愛者(Lover)= 感謝・調和・情熱
  • 創造者(Creator)= 表現・想像・形にする力
  • 統治者(Ruler)= 秩序・リーダーシップ・責任感
  • 魔術師(Magician)= 変容・ビジョン・直感
  • 賢者(Sage)= 真実・知恵・洞察
  • 道化師(Jester)= 遊び心・ユーモア・型破り
「アーキタイプ」by Carol S Pearson

アーキタイプは物語では個別のキャラで表現されますが、実際には「私は魔術師タイプ」のような捉え方をするものではなく、一人の人の中に全てのアーキタイプが存在していると考えられています。

キャロルはこの著書の中で、「自分の中の12のアーキタイプを成長させることが、人生をより良いものにしてくれる」と語っており、人の成長をサポートするコーチングにおいても、切り口の一つとしてとても面白いコンセプトだと感じています。

自分の中のアーキタイプを目覚めさせ、統合し、状況によって適切なアーキタイプを前面に出せるようにする。それこそが成長であり、セルフマスタリーと呼ばれるような自己統合のプロセスなのですね。

アーキタイプは人との出会いでレベルアップする

では、アーキタイプをどのように成長させればいいの?という話なのですが、2025年に日本ゲーム大賞を受賞したRPGゲーム「メタファ・リファンタジオ」に、分かりやすいヒントがありました。

ゲームの世界は神話やファンタジーを軸としていることが多く、英雄の旅との共通点もよく見られます。この作品にも「戦士」や「道化師」、「魔術師」などのアーキタイプが登場し、主人公は様々なキャラクター(異なるアーキタイプの体現者)と出会い交流を深めることで、自身の中の対応するアーキタイプが共鳴し、覚醒し、レベルアップしていきます。

これは、現実の私たちにも当てはまるような気がします。

例えば私は自分の「賢者」のアーキタイプのレベルが、そこそこ高いと感じています。哲学的な議論を好むフランス人と暮らした20代であったり、または禅の世界に縁のある方がマイコーチだったりと、「賢者の素質」を持つ人達との出会いが私の中の賢者を育ててくれたのではないかと感じています。

出来るだけ多くの人と出会うべきというよりも、多様な素質を持った人々と出会い、その考え方や物の捉え方に触れること。それによって、自分の中のアーキタイプもどんどん目覚め、成長していくのだと思うのですね。

成長の鍵は、出会いと「共鳴」

ユングはこの内なるアーキタイプが目覚めるプロセスにおいて、「共鳴」が重要であると述べています。例えば同じ人、同じ出来事に出会っても、人によって受け取り方は違っている。フランス人の議論したがる傾向を「なんて面倒な人達なんだ」と感じる人もいれば、「面白い観点で世界を見ている」と感じる人もいるでしょう。

相手に感じた尊敬・憧れ・違和感・嫉妬、どんな反応もすべて、「自分の中のその素質が目覚めようとしているサイン」。共鳴は、内なるアーキタイプからの「ノック」だと捉えれば、それは私たちの成長の機会となり得ます。

共鳴が無ければ、出会いはただの出来事で終わります。ですが共鳴が起きれば、それは自分の物語の一部になっていくんですね。

アーキタイプについて語り始めると、どこまでも語れてしまうので今回はこの辺りで。
▼さらに詳しく知りたい方は是非、キャロル・S・ピアソンのこちらの本も読んでみてください(かなり読み応えあります)。

この記事を書いた人

大原亜希

ICF認定PCCコーチ

強みや価値観をヒントに、ビジネスパーソンやクリエイターの「自分らしく働く&生きる」をサポート。大人の自由研究のように、正解のない問いを一緒に探求する対話をしています。

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