【4/20(日)】Re:Book~ひとつの物語から始まるチームの対話空間~「共感(Empathy)」

帰る場所があるから、人は旅に出られる~We Travel, Because We know Where We Can Return~

「My point of view」は、旅先で出会ったことや日々の生活で気づいたことなど、私の世界の捉え方をエッセイ調で綴ったシリーズです。


「いってらっしゃい」

という日本語独特の表現が好きだ。
特に「駅」や「空港」など、「旅の起点となる場所」で言われるこの言葉には、謎の高揚感を感じてしまう。「さあ、これからわたしは旅に出るのだ!」と、思わせてくれる感じがいいのかもしれない。

つい先日も、京都から東京へと向かう新幹線に乗り込む前のこと。お気に入りのパン屋で朝ごはんを調達したら、売り子のおねえさんが「いってらっしゃいませ」と笑顔で送り出してくれた。

今から遠くへ出かけること何で知ってるんですか!?と思った瞬間、朝だからそりゃ皆どこかへ出かけるだろうと思いなおす。

この「いってらっしゃいませ」という表現は、日本の空港から海外へ出かける時にもよく聞く。チェックインカウンターでも、搭乗口でも。実は英語やフランス語にはこの表現は無くて、もっと違う言葉になる。

オーストラリアから日本に帰省する時、金髪の陽気なおじさんがかけてくれたのは「Bye.(じゃあね)」というなんともドライな言葉だったし、パリの空港を発つときパリジェンヌは「Bonne journée.(よい一日を)」と言ってほほ笑んだ。もちろんこれも悪くないけど、ちょっと印象が違う。

しいていうなら、世界一乗り継ぐ人が多いと言われてるカタールのドーハ空港で、「Have a nice trip(良い旅を)」と言ってくれたハロッズカフェの店員さんから受けた感覚が、ほんの少しだけ近かったかもしれない。

「いってらっしゃい」という表現は、「おかえりなさい」とセットになっている。「じゃあね」や「良い一日を」や「良い旅を」が一期一会の表現なのに対して、「いってらっしゃい」だけは「再会を前提にしている」表現なのだ。

帰る場所がある、というのは、なんだかとても安心する。実際には「いってらっしゃい」を言ってくれた空港カウンターのおねえさんや、売店の売り子さんに再び出会うことなんてまずない。でも「この場所にまた戻ってくる」、それだけは確かだ。

「人生は旅だ」なんて思ってはいるけれど、自分が帰る場所があると知ってる旅と、スナフキンのように漂う旅では、ちょっと違うのかもしれないと思ったりする。

「ただいま」と言える場所があること。

それがより自由に、より大胆に、旅できる勇敢さを、わたしにくれるのかもしれない。