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コーチングにおけるコーチの役割

「質問する」「フィードバックする」などのスキルが注目されやすいコーチングですが、実際にセッションでコーチが担う役割は多岐に渡っています。コーチはやり方(Doing)よりもあり方(Being)が重要と言われており、そこにも繋がる3つの役割を紹介します。

クライアントの鏡になる

Everybody else needs mirrors to remind themselves who they are. You’re no different.  
誰もが自分が何者か知るために鏡を必要としているんだ。もちろん君も。
ーJonathan Nolan

人が見ている世界は180°ほど、何かに焦点を当てている時は36°まで狭まると言われています。首を動かしたり、体そのものを動かせば、視点を変えて別の場所を見ることが出来ますが、それでも見ることが出来ないたった一つのものーそれは『自分自身』です。
自分を見ようと思ったら、たいてい鏡を見るのではないでしょうか。そうすると髪の毛のハネや左右の体のバランスが見えたり、時には思っているより嬉しそうな自分、疲れている自分を鏡の中に見つけることもあるでしょう。

セッションにおけるコーチの役割のひとつは『クライアントの鏡になる』ことです。顔の表情や声のトーン、しぐさなど、外側だけでなく、内面を映し出す鏡にもなります。

童話「白雪姫」の中では鏡は魔法の力で女王の心を映し出しましたが、もちろんコーチは魔法を使うわけではありません。クライアントの話を五感を使って聴くことによって、話していることと本音のギャップであったり、本当に望んでいることを直観で感じとり、フィードバックとしてお伝えします。

フィードバックをどう扱うかはクライアントに委ねられているので、「ああ確かにそうかも」になることもあれば、「いやそうではない」になることもあります。大切なことは、クライアントが自分の内側の深いところにある思いを言語化し、自ら気づいていくことであり、コーチはそれをサポートするために鏡となるのです。

クライアントの状態をありのまま映し出すには、鏡はぴかぴかに磨かれている必要があります。曇っていたり、歪んでいたりすれば、本来の状態とは違う姿で映ってしまうからです。

コーチが内面を常に磨くようにしているのはこのためで、自分自身の課題や周囲を取り巻く環境に影響を受けた状態でセッションに臨めば、当然それが反映されてしまいます。問題や課題が一切ない完璧な状態に自分を保っておくという意味合いではなく、自分の課題や感情との向き合い方をコントロールしたり、セッションの前にはそれを一旦脇に置いて、フラットな状態でクライアントに向き合うことが常に求められます。

二つのスペースを創る

Blank sheets of paper are open to any possibility. Entirely new worlds can be created out of emptiness.
真っ白な紙は、全ての可能性に対して開かれている。完全に新しい世界は、からっぽから生み出される。
ー「Tao of Holding Space」

コーチが担う役割のひとつに「スペースを創る」があります。ここには二つの意味があると私は考えています。
1)問いかけることで脳に空白を創る
2)クライアントが自由に自分を表現できる場を創る

まず一つ目のスペース=「空白」について。
例えば「ダイエットしたい」というテーマを扱うとします。コーチングの場合、「食事制限をしましょう」「週に3回ジムに通いましょう」などアドバイスをする代わりに、
なぜダイエットをしたいのですか?
という問いから始めます。

人の脳は空白を嫌います。「わたしはなぜダイエットしたいんだろう?」という真っ白な部分が出来ると、それを埋める、つまり答えを見つけるために「考える」ことを始めるのです。セッションはその瞬間ごとにコーチとクライアントが創っていて、コーチは直観的に浮かんだ質問の中で、クライアントにとって価値があるものを場におきます。

コーチングで使われる質問はシンプルなものが多いのですが、これまでに考えたことのない問いであったり、脳が中々答えを見つけられない問いも多く存在します。脳は空白が埋まるまで考え続ける傾向があるため、セッションの後にも思考が続いていくことが多いのです。

ひと昔前は、質問は「気づきを引き出す手段」と言われていたこともありますが、気づきは内から生まれるものであり引き出すことは出来ません。現在では質問は「クライアントが自ら考え気づく」のをサポートする手段の内のひとつ、となっています。

コーチが創る二つ目のスペース=「自由に自分を表現できる場」は、クライアントが心を開いて話せる、ありのままの自分を出せる、安心の場。日常生活の中で人は無意識に、エネルギーの大半を自分を守るために使っています。「これを言ったらどう思われるだろうか?」「こんな自分は見せられない」と鎧を重ねてガードを固める時、人が本来持っている創造性は失われ、兜の中から外を見るように視野は狭くなってしまいます。

仕事のやり取りや日常会話では敬遠されがちな「沈黙」は、コーチングにおいてはとても貴重な時間です。場に置かれた問いに対して、または自分自身の中に浮かんできた問いに対して、自分はどう思うか、感じるか、自分の世界の内側を探しに行くようなイメージです。長い時には5分以上黙ったままのこともあります。

スピード感を求められる現代社会において、一つのテーマに対してゆっくりと深く考え、言語化する機会は実は中々ないのかもしれません。ありのままの自分を出せる場所、浮かんだことをなんでも言葉にできる場所。小さい頃の秘密基地のような、安心できる場所を持っていることが、人が本来持っているポテンシャルを発揮することに繋がっていくのではないかと思います。

インスパイアする

コーチングは創造的なコミュニケーションと呼ばれるように、コーチとクライアントが互いにインスパイアされ、対話を生み出しています。セッションを通して学びや気づきを得ているのは実はクライアントだけではなく、コーチもまたクライアントから多くのことを学び気づきを得ているのです。

コーチの役割は「触媒(Catalyst)」になることである、とも言われます。50:50の割合でコーチングが成り立っていることを考えると、コーチはクライアントがインスパイアされるような存在であり続けることが大切です。セッションの中に限られた話ではなく、コーチの生き方や価値観そのものが、クライアントに影響を及ぼすからです。

「あり方を磨く」という話に繋がっていくのですが、自分を探求する旅をしていない人に、旅のお供をお願いしたいとはあまり思わないですよね。人は誰でも完璧ではないけれど、自分の個性をよく理解し、常に才能を開発し続け、クリエイティブであろうとする人となら、一緒に旅すると大いに刺激を受けそうです。

プロのコーチは大抵、自分自身にコーチをつけ、自分と出会う旅を続けています。コーチになりたての頃、わたしの尊敬するコーチはこう言いました。

あなたが旅したところまで、誰かをガイドできるのよ

コーチ自身の成長の幅が、クライアントの成長の幅へと繋がっていく。私はこれからもずっと、「Who am I=私は何者なのか?」を探求し続ける旅人でいたいと思っています。

コーチングは受けることでも様々なメリットがありますが、学ぶことで得られるものも数えきれません。コーチ側の景色が見えるようになると、クライアントとしての力も上がりセッションも効果的に機能しやすくなります。何よりも、クライアントと一緒に成長していけるというのは、大きな魅力の一つです。コーチングに興味のある方は、是非学ぶことも視野に入れてみてくださいね。

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