私のコーチングでは毎回セッションの前に、前回からのリフレクション（振り返り）を専用のシートに記入していただいています。近年組織の人材育成などでもよく聞かれるようになったこの「リフレクション」というワード。ちょっと深堀してみたいと思います。
リフレクションとは何か？
「リフレクション（Reflection）」とは元々、光の反射や音の反響を意味する言葉ですが、そこから転じて経験や思考さらには感情について「意識的に深く考える」プロセスを指します。日本語ではシンプルに「振り返り」と訳されたり、「内省」と訳されることもあります。
「意識的に」「深く」という点がポイントで、例えば今月何をやったかという「事実をリスト化する」だけに留まらず、「どんな気持ちがあったか」「なぜそのように動いたか」など、感情や行動の背景までを客観的に振り返ることを指します。
情報過多で常に外部とのコミュニケーションが切れることのない現代において、「自分との対話」でもあるリフレクションの時間は、個人の学びや成長にとても重要です。様々な影響をもたらすリフレクションの価値から、3つピックアップしてみましょう。
リフレクションの価値①：経験が学びに昇華される
数年前にコーチングスクールに通っていた時、100時間セッションを目指している一人の受講生から、セッション時間が計10時間と計60時間の時にそれぞれコーチングを受けました。セッションがすごく上手くなっていたかというとそうでもなく「どんな風にセッションの振り返りしているんですか？」と尋ねたら、「忙しすぎて振り返る時間が無いんです」という回答が。
こういったことは、私たちの誰にでも日常的に起こっていることのような気がします。次から次へとタスクに追われたままだと、せっかく経験したことも自分の血肉にならないまま、過去に埋もれてしまいます。
リフレクションの時間を定期的に設けて「どんなことに気づいたのか？」「学びは何だったのか？」を言語化すると、やりっぱなしで終わるのではなく、経験がしっかりと自分の学びへと昇華されます。それはまるで過去に足跡を残し、未来へのヒントを手に入れるようなイメージです。
リフレクションの価値②：自己認識が高まる
リフレクションがもたらすもう一つの価値は、「自己認識（セルフアウェアネス）」が高まることでしょう。経験の中にある思考や感情などを丁寧に紐解いていくと、自分の価値感やビリーフ（信念）、行動の動機などが明確になっていきます。
どんな時に心が揺れるか、いつもやってしまうことは何かなど、自分の持つ「思考や行動のパターン」に気づきやすくなることもまた、セルフコントロール力を高めていく上でとても価値があります。
「自己認識（セルフアウェアネス）」はコーチングが上手く機能する上でも、非常に重要な要素です。自己認識が低いままだと成功を阻む同じパターンが何度も繰り返されますが、リフレクションの習慣を持つと少しずつ自己認識が高まり、古いパターンを壊してアップデートさせることも容易になります。
リフレクションの価値③：「ある」ものに目を向ける習慣が身につく
視力検査で「C」の文字を見ると自然と空間に目がいくように、人は「欠けているもの／無いもの」に焦点が当たりやすい生き物。上手くやれたことや達成できたことよりも、「出来なかったこと」についつい目が向きやすいのですね。
だからこそ意識的にリフレクションの時間をとり、そこに「”ある”ものに目を向ける習慣を持つ」ことがとても重要なのです。達成したことやそこからの学びと成長を確認することは、自己肯定感を上げることにも繋がります。
その上で重要なポイントは、「フラットな視点で振り返る」ことです。「失敗したけど上手くやれた」はポジティブな視点、「失敗した。もう自分には無理」はネガティブな視点。リフレクションでは「これを失敗だと自分が感じているのは何でだろう？」という視点まで深堀をしていきます。
「上手くいった時」こそ、リフレクションが重要
失敗した時や上手くいかなかった時は、誰でも振り返りをして改善に繋げることが多いものですが、リフレクションが最もパワフルなのはむしろ「物事が上手くいった時」。このウェブサイトで扱っているストレングスファインダーの強みの哲学でも、「成功パターンを分析することにこそ意味がある」と言われています。
何かが上手くいった時はつい達成感に浸ってそのまま次へと進んでしまいがちですが、そんな時こそ立ち止まることが大切です。どういうプロセスを踏むと成功に繋がりやすいのか、また自分でも気づいていない強みは何かなど、自分なりの成功法則が見つかると、それは未来にも活用できる貴重なリソースとなります。
最後に：
リフレクションは、ただの振り返りのプロセスではなく、自己理解を深め、過去の経験を未来への力に変えるためのパワフルなツールです。けれども日々の忙しさに流されてしまうと、気づきや成長のチャンスを逃してしまいがちです。
物事が上手くいった時も、そうでない時も、是非リフレクションの時間をとってみてください。それはあなたの成長の旅路に意味のある足跡を残し、未来への羅針盤になってくれるでしょう。
ストレングスファインダーの「内省」を飼いならす 
才能のルーツを辿る～あなたの傾向性を形作るもの～ 
