【10/19(土)】Re:Book~ひとつの物語から始まる対話の空間~「不確実性(Uncertainty)」

「教えないこと」の大切さ

アドバイスは「体験」を奪う

むかーし、職人をしてた時代。部下を育てるのが楽しくなってきた頃に意識してたのって
「教えないこと」
だったんですよね。

何年も経験を積んでいれば、そりゃあ自分なりの正解というか、「上手くいくやり方」「失敗しないやり方」って、色々持っているわけです。相手も当然それを知ってるから、「どうしたらいいですか?」っていう質問がやってくる。

最初の頃は頼りにされるのも嬉しくて全部答えてたんですけど、ある時ふと思ったんです。
「こうすると上手くいくよ」
というアドバイスを先に渡してしまうことで、相手の「体験」の機会を奪ってるんじゃないかって。

知識は「体験」を通して、初めて「学び」になる。それは職人に限らず、コーチでもファシリテーターでも同じだと思っていて。だから敢えて「ちゃんと失敗する体験」と、そこから学びに変えていくプロセスって大事だなあと。

アドバイスよりも「問いかける」

上手くいかない経験をした後って、すごいチャンスなんです。

・どうなっててほしかったのか?
・何で躓いたと思うのか?
・じゃあ次回はどこを変えてみるのか?

そうやって問いかけて「対話」をすることによって、相手は自分で答えを見つけることが出来るし、その思考パターンが身につけば色んなところで役立つ。

「どうしたらいいですか?」にすぐに答えていると、「教える人と教えられる人」という関係性が出来てしまい、それがひとつのパターンになってしまう。「自分で考える」「自分で試行錯誤してみる」という習慣の代わりに、「誰かに答えを教えてもらう」が気づかないうちにその人のパターンになってしまうわけです。

わたしは職人時代は「レシピ好きなだけどうぞー」という、自分のナレッジは共有したいタイプの人だったので、このアプローチってまあ最初は葛藤があって。

アドバイスするほうが簡単なんです。
「こうしてみたら?」
「私ならこうする」
って言っちゃうほうが、早いんです。

でも、相手が体験するためのスペースを残しておく。その人なりの答えを見つけていくのに役立つ問いや、視点の提供はしても、自分が「正解」になってしまわないよう意識し続ける。唯一の「正解」を設定した瞬間に、成長のためのスペースは埋まってしまうから。

「相手のためのスペース」は可能性が開く場

職人時代に一緒に働いてきたシェフはどなたも個性的でよく覚えてるんですけど、強烈に覚えている経験がひとつあります。当時私は、自分の能力が今からやろうとしているチャレンジを満たせるレベルなのかどうか、やや不安があったんですね。そのことを率直に伝えたところ、その方は

「俺は失敗が見たい」

っておっしゃったんです。しびれるでしょ?

「成功なんて学べることがほとんど無い。上手くいかなかったら、そこから学べることが俺にも色々ある。一緒に失敗しようや。それで試行錯誤しながら一緒に創っていったらいいやんか」って。その言葉を聞いて、プレッシャーから一気に解放されました。「失敗したら嫌」から「失敗してもいいからチャレンジしてみよう」に視点がシフトした瞬間でした。

鉢植えに植えた木を、その成長に合わせて鉢自体も大きくしていくように、人の成長にもまた、その時期に合った「スペース」が必要なのだと思うのです。それは相手が自分で考える場であり、自分なりのやり方でやってみる場であり、その体験を糧にして自分自身の力で根をはっていく場なんですよね。

「教えないこと」=相手が自分の可能性を開放していくスペースを作ること。

目の前の人の中に眠るポテンシャルを信じて、関わり続けたいですね。

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