この記事ではストレングスファインダーの34資質のひとつ、「責任感(Responsibility)」の持つ世界観やその活かし方について書いています。
責任感は守る
実行力グループに属する資質は、それぞれに異なる動機で動いていますが、責任感を動かしているのは「約束」です。英語ではPromiseではなく「Commitment」と表現されることからも分かるように、できたら守るというようなレベル感ではなく、責任を伴う誓約に近いニュアンスだろうと思います。
待ち合わせの時間、資料の〆切だけでなく、自分がやると言葉に出したことについて、責任感はどこまでも誠実です。
「有言実行」という言葉をナチュラルに実践している才能であり、周りの人からはとても信頼されているだろうと思います。約束を言語化した時点で、見えない誓約書にサインをする感覚なのかなあと想像しているのですが、その一方で責任をもって実行できなさそうなことは、約束しないという一面も持っています。
仕事でも、人間関係でも、ありとあらゆる場面で、その誠実さは相手に伝わります。実行力資質のグループに属していますが、人間関係を築いていくうえでも、パワフルに働く才能です。
責任感は真っすぐに向き合う
この資質が大切にしているもうひとつの価値観は「正しさ」です。責任感の中には「正しいことをやりたい」という欲求があるのです。それは「Should(~すべき、~であるべき)」といった言葉で表現されることが多いように思います。
周りの人から見た責任感は、どちらかというと「真面目な人」に映るかもしれません。ですが私が彼らを見ていて感じるのは、「どこまでも真っすぐ」であるということ。
部下が失敗した時には「わたしにも監督責任がある」と、自分を見つめられる。自分自身が失敗した時には「ごめんなさい。わたしのミスです」と、正直に伝えられる。
間違いを犯したときに、それを認めることはとても勇気のいることです。相手をかばうどころか、自分自身の失敗でさえ誰かのせいにしてしまう人もいるのですから、責任感がもつこの素直さはとても貴重なものです。
仕事であれプライベートであれ、責任感は周りの人から絶大な信頼を寄せられていることが多いのですが、その理由の一つはこんな一面から来ているのだろうと思います。
責任感は反応する
責任感の英語訳は「Responsability」。分解してみると「Response+ability」という二つの単語で成り立っていることが分かります。つまり反応する能力を持っているのです。
自分の目の前にやってきた出来事、周りで起きている出来事に対して、責任感は敏感に反応します。自分には関係無いからといって素通りするとか、無視するという発想はおそらく無いだろうと思います。責任感が持つ価値観の中には、どこか他者が関わる部分が存在していて、「相手の期待に応えたい」「役に立ちたい」という思いがそこにはあります。
必ず約束を守ってくれる傾向とも重なって、責任感の元にはたくさんの依頼が舞い込みます。仕事やタスクはもちろん、ありとあらゆる相談事まで。中には「なぜこの仕事をわたしに??」と思ってしまうような、離れたところからのタスクもやってくるかもしれません。
「この人ならきっと何とかしてくれるに違いない」
そんな思いを周りの人は抱きます。
人に対する信頼というのは、一朝一夕で生まれるものではありません。小さいものでも大きいものでも、これまでにコツコツと大切に守り続けてきた約束の積み重ねが、かけがえのない信頼感を築き上げたのだろうと思います。
責任感は所有する
責任感を表す、もうひとつのキーワードは「オーナー(Owner)」です。つまり借主ではなく、持ち主であるということ。
責任感はありとあらゆることについて、自分事として捉える傾向があります。文字通り、仕事やタスクや課題を、自分のものとして所有するのです。コミットする力が強いとでもいうのでしょうか、「わたしには何が出来るか?」「わたしにはどう出来たのか?」という視点を、常に持ち合わせているように見えます。
同時に、「自分がやらなければ誰がやる?」という感覚も、あるのではないかと思うのです。責任感がこういった価値観を持つようになった背景には、もしかすると小さい頃の環境が影響しているかもしれません。
例えば家族の中で第一子であったり、自分が面倒を見ていたペットがいたり。「自分が動かなくても、誰かがどうにかしてくれる環境」ではなく、それゆえに率先して主体的に動くようになった可能性もあるでしょう。
責任感を育てる
相手に頼られること、その期待に応えることは、責任感にとっても嬉しいことなのですが、「両手に持てる量には限りがある」ということを忘れてはいけません。
責任感にはどこか自己犠牲的なところがある、というか、自分自身の幸せややりたいことを脇に置いてでも、既に誰かに約束したことを守り続けようとする傾向があります。
そんな時、責任感は疲弊してしまい、出口の見えない迷路にいるような気分になるかもしれません。特に才能が未熟な状態だと、引き受けたタスクが全て「義務」=やらなければいけないことになってしまい、そこに喜びを見いだせなくなることがあります。
この才能を育てていくことを考えるとき、物事を所有する傾向がある責任感にとって、「手放す」ことは一つの鍵になるだろうと思います。
反応する力がある責任感は、誰かに何かをお願いされたとき、その場で瞬時に答えるのがパターンになっているかもしれません。まず最初のステップとして「判断を遅らせる」こと、つまりその場では回答せずに、一旦持ち帰って検討することから始めてみてください。
「それは本当にわたしがやる必要があるのか?」
「もしこれをやらなかったら、その時間で他のどんなことができるのか?」
について、少し考えてみてください。やるべきだ、と感じていることについて、本当にやりたいのかどうか、自分に尋ねてみてください。
責任感をさらに育てる
「手放す」話の続きになってしまうのですが、責任感にとってもうひとつのチャレンジは「Noを言う」ことだろうと思います。「断る」という行動に抵抗を覚える方も少なくないはずなので、代わりに断ってくれる人がいればそれが理想ではあります。とはいえ、環境や立場によっては、そうはいかない場面でもあるでしょうから、周りの断ることに抵抗が無い人をモデルにしつつ、小さなことから「Noを言う」練習は必要だと思います。
可能な限り引き受けたい、その気持ちはとてもとてもよく分かるのですが、それによって自分が苦しくなってしまうとしたら、とても残念だと思います。
とにかく「Noを言う」ことが難しい、と感じている方は是非、「何にYesを言うか選ぶ」という視点から始めてみてはどうでしょうか?私たちが何かを手に入れるときは、同時に何かを失っています。何かにYesを言うということは、暗に何かにNoを言うことでもあるのです。
あなたが持つそのユニークな才能が、あなた自身が喜べる場所で活かされることを私は祈ります。誰かに応える前に、自分自身の願望にもどうか応えてあげてください。自分自身を大切にすることはやがて、誰かを大切にすることにも繋がっていくのですから。
誰よりも約束にコミットし、信頼の輪を世界に広げていく責任感。
わたしが愛してやまない世界の一つです。