この記事ではストレングスファインダーの34資質のひとつ、「適応性(Adaptability)」の持つ世界観やその活かし方について書いています。
適応性は変化を楽しむ
適応性は物事の「バリエーション」を好みます。単調な毎日がずっと続いてくことよりも、何かもっとワクワクするような、予想もしていなかったようなことが起こるのを、心待ちにしています。
多くの人にとって不安や恐れを生み出す「変化」というものは、適応性にとってはむしろ歓迎すべきことです。世界は刻一刻と変わっていくもの、それを誰よりも知っているからかもしれません。
適応性は変化が起こったときに、フリーズしてしまったり慌てふためくことがありません。むしろ緊急事態であればあるほど、頭が冴えわたり「今何をすべきか」に焦点が当たります。
彼ら自身の冷静なあり方が変化の中で周りを安心させるため、人間関係構築資質に分類されていますが、ある種、実行力を伴ってもいます。
適応性はしなやかに動く
例えば桜のようなどっしりとした木は、何にも負けない芯の強さを持っているように感じることがあるかもしれません。ところが実際は、台風などで強風が吹き荒れると、桜は根こそぎ倒れてしまうことがあります。一方でそよ風にも揺れる柳の木は、一見繊細に見えますが、強風の中でも上手く風に合わせて動き、倒れずに立っていることが出来ます。
適応性の大きな強みの一つは、その「柔軟性」にあります。物事は変わっていくもの、ということを知っている適応性は、組織や人生で起こる変化に柔軟に対応します。それもゆっくりじっくり合わせていく、というのではなく、何かが起こった時にスッとそこに馴染んでいくような、そんな俊敏なしなやかさを持ち合わせているのです。
「頑として自分の意見を曲げない」なんてことも少ないので、誰かとぶつかって倒れてしまうこともあまりありません。適応性の生き方って、周りから見てると、なんというか「流れるような」生き方なのです。流れに逆らわず、上手くそこに乗って、気づいたら次の場所へ辿りつくような。
適応性は今を生きる
「その日を摘め。明日を信じるのではなく。」
(Carpe diem quam minimum credula postero. )by Horatius
元々はラテン語から来ている「Carpe diem(カルペ・ディエム╱その日を摘め)」というこの言葉。映画「今を生きる」のなかでロビン・ウィリアムスが言う台詞で、有名になったとか。
人の悩みの大半は過去と未来に関することです。やってしまったこと、やらなかったことへの後悔、そして起きるかもしれないこと、起きないかもしれないことへの不安。どんなに悩んでも過去を変えることはできず、未来もその時になるまで分からない。とすれば、変えられるのは今、この瞬間の思考や行動だけ。
「今ここに集中する」ことはマインドフルネスなどでも、よく取り上げられるテーマなワケですが、それを天然でやっているのが適応性。明日の心配なんかしたって、仕方がない。未来に何が起こるかを予測しても、実際はその時にならないと分からないのだから。
適応性は「今」を楽しみたいのです。何か面白いものに出会ったら、元々の目的とは違ったとしても、そこに跳びこんでみたいのです。例えばバックパッカーで気の向くままに世界一周とか。国内旅行でも何もプランを決めずに現地へ行くとか。
旅には、予想外の出来事が溢れています。それは少なくとも繰り返される日常ではありません。適応性は次々にやってくる、人や物や出来事との出会いを楽しみます。それは彼らの中にエネルギーが満ちる瞬間です。
適応性は合わせる
例えば、川の中に足を入れたとき、適応性はその水の冷たさや柔らかさ、そして川底の砂利のゴツゴツを楽しむことができると思います。この川じゃなくて去年行った別の川のほうがいいな、とか、足を滑らせたらどうしよう、とか、別の場所や時に思いを馳せたりしません。そんな風に、彼らは「自分と今を繋いでおく」ことが出来るのです。
適応性の英語訳は「Adaptability」で、Adapt(適応させる)+ ability(能力)という二つの言葉から成り立っています。Adaptはラテン語で「くっつく」というような意味合いがあるのですが、適応性が自分を合わせていく先は多岐にわたっています。
新しい環境、新しい状況、変化だけでなく、自分の振る舞いやスタイル、視点まで。
チャールズ・ダーウィンの有名な言葉で、「生き残るのは変化に最も適応したものだ」というのがありますが、その点において適応性の強みはとてもパワフルなものです。
反応の速さも特徴的ですぐに対応してくれるので、一緒に仕事をしている人は「とてもやりやすい」と感じることも多いようです。特にチームのリーダーが適応性を持っていると、組織につきものの変化のなかでも、チームメンバーは「きっと大丈夫」という安心感を得られるだろうと思います。
適応性で今を繋げていく
「今を生きる」ことを、とても大事にしている適応性にとって、先の目標を定めてそれに向かって着実に行動する、というやり方は、少々面白くないかもしれません。
目的地までの道を決めるのは確実にそこへたどり着くためですが、適応性は達成することよりもむしろ、その途中のプロセスの瞬間瞬間を楽しむようなところがあります。そもそもその目的地すら、道中に別の場所に変わることだってあるのですから。
起こることに反応し、飛び移るように適応していく。そうして振り返ったときに、自分の置いてきた点が線になっていた。そんな成功パターンもあると思います。
「なんかよく分かんないけど、こんなとこまで来れちゃいましたね。」とか言ってる適応性って、なんだかとってもカッコイイなあ、と私は思うのです。
適応性で今を贈る
時計の針は進んでる。今日を大切にするんだ。
時間は決してわたしたちを待ってはくれないのだから。
昨日は過去であり、明日は未知のもの。そして今日この瞬間は贈り物。
だから今をPresent(プレゼント)と呼ぶんだよ。
ーアリス・モース・アール
過去は、いつでも振り返ることができます。そして未来もまた、いつだって描くことができる。でも、今、というこの瞬間だけは、今しか味わうことが出来ません。
英語の「Present」には二つの意味があって、一つは今、そしてもうひとつはプレゼントです。
「今」を生きている適応性は、そもそも自分が今どこにいるのかを知っています。今ココに集中しているからこそ、それがどれだけ恵まれているかとか、何を学べるかとか、今あるものに対して価値を見出すことができるのです。
周りの人が過去や未来への不安の中にいるとき、今この瞬間の中に見えている無限の可能性を、その価値を、相手に伝えてみてください。それは「今を生きている」適応性だからこそ、見えることなのですから。
誰よりもしなやかに、この世界の今を生きる適応性。
わたしが愛してやまない世界の一つです。