【11/16(土)】Re:Book~ひとつの物語から始まる対話の空間~「独創性(Out of the box)」

「自信が無い」を繰り返すクライアントへのアプローチ

しかめ面をする猫

セッションにおける様々なテーマの中で耳にすることのある、「自信が無い」というクライアントの言葉。自分がチャレンジを重ねてきており、「自信は行動や経験を通して身につく」と考える傾向のあるコーチほど、クライアントの気持ちに共感を示すことが少し挑戦的に感じられるかもしれません。

この記事では、特に「自信が無い」が口癖になっているクライアントに接するときに、コーチが考慮したいことや、持っておきたいマインドセットについて書いています。

「○○が無い」に対して、ついやってしまいがちなアプローチ

「自信が無い」という言葉を繰り返すクライアントに対して、わたし達コーチがついやってしまうこと。それは、なんとか「自信を持たせようとする」ことではないでしょうか?

なるほど確かに「無い」ものに焦点が当たっているクライアントに対して、「ある」ものに焦点を当てるのはセオリーどおりです。特に「自信を持ちたいんです」という願望がクライアントから出ていると余計に、「既に出来ていることは何か?」「どうしたら自信が持てるか?」、つい聞きたくなってしまう気持ちもよく分かります。

あんなこともこんなこともやってきたではないのと、相手に成長を思い出させたくなるかもしれませんし、「あなたはそのままで価値があるのだ」と、熱を込めて伝えたくなるかもしれません。

けれども人が持つ「無意識の思考・感情・行動のパターン」には、「その人なりの繰り返す理由」が存在しているもの。そこに正面から取り組まないことには、似たようなテーマが繰り返し現れ、根本的な自己変容には繋がらないでしょう。

クライアントの言葉の向こうにあるもの

無意識に繰り返される思考や行動のパターンは、多くの場合それによって何かしらのメリットがあるからこそ起こっています。「自信が無い」と繰り返すことで無意識に得ているものには、以下のようなものがあるかもしれません。

  • 失敗や批判への保険
  • 同情やサポートの引き出し
  • 他者の期待のコントロール
  • 自己正当化の手段

テニスで例を出すなら、「プレイに自信が無い」と常に言っている人に対して、強く責めたりすることはまずありません。むしろ「そんなことないよ、すごいショットにパワーあるよ」と肯定的な評価を引き出したり、「大丈夫だよ、次頑張ろう」と手厚いサポートをしてもらったりすることが増えるでしょう。

無意識のパターンによって得ているものは人それぞれ違っていますが、多くの場合、その背景には本人も気づいていない「心理的な安全を求める欲求」があるように感じています。

言葉を変えるとそのパターンは「その人なりの生存戦略」の可能性があり、「自信が無い」という言葉を繰り返す、又は「自信が無い自分」であり続けることで、心理的に安定した状態を長年保ってきたのかもしれません。無意識に繰り返される生存戦略は、私たち誰にでも存在するのものです。

意識したいコーチのマインドセット

こういったテーマに向き合う時にはまず、「”自信が無い”という言葉の向こうにあるもの」や「そのパターンは今も機能しているのか?」などをクライアントと一緒に探求していくことが大切です。その際、以下のようなマインドを持っておくことが、役に立つかもしれません。

ニュートラルさ(Neutral)

「自信が無い」と感じることや口癖になっていることを、「良い/悪い」で「判断する(Judgement)」のではなく、ニュートラルな視点から関わります。

私たちの持つ「無意識の思考・感情・行動のパターン」は本来ニュートラルなもの。「自信が無いからしっかり準備する」「自信が無いから学び続けたい」など、前向きなエネルギーに転換されているなら、それは機能しているパターンと言えるでしょう。

クライアントの持っているパターンが、前に進むのを繰り返し阻む「障害」になっている場合には、そのパターンについて扱ってみることに価値があるかもしれません。もちろんコーチが勝手に判断するのではなく、探求してみたいかどうかクライアントに確認することも大切です。

好奇心(Curious)

「判断する(Judgement)」の対極にあるともいえるマインドセットが「好奇心を持つ(Be Curious)」状態です。ひとえに「自信が無い」といっても、その向こうにある価値観や願いは、クライアントによって様々。

自分と大きく異なる価値観や思考のスタイルを持ったクライアントに対峙すると、「今ここに在り続ける」ことが難しく感じられ、傾聴レベルも下がってしまうことがあります。そんな時には、私は尊敬しているコーチの言葉を思い出します。

ー目の前の人は今この瞬間にブレイクスルーを起こそうとしているのかもしれない、と思って話を聞きなさい。

クライアントが繰り返す言葉はしばしば、クライアントの世界観を探求するための「Inivitation(招待状)」になると言われます。その向こうにどんな景色が広がっているのか、常に好奇心を持ち続けられるコーチでありたいですね。

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「自信」の正体 セッションのテーマを決めるとき大切にしていること