【11/16(土)】Re:Book~ひとつの物語から始まる対話の空間~「独創性(Out of the box)」

人は「セーフティネット」があると、チャレンジしやすくなる

コーチングに関連する英語の情報を読んでいると時々、「safety net(セーフティネット)」という言葉に出くわすことがあります。日本語に訳すと「安全ネット」ですね。セッションやワークショップの中では、これは「守秘義務」に近い意味かな、と解釈しているのですが、安心して自由になんでも話せる環境を作ること、とっても大切です。

そして、コーチングを継続的なプロセス、と捉えるときに、この「セーフティネット」には、もうひとつ別の側面もあるのかなと思っていて。コーチングを職場や学校で活用されている方は、是非あなたにしっくりくる場面(上司と部下、先生と生徒など)を想像しながら、一緒に探求してみましょう。

「セーフティネット」がもたらすもの

「セーフティネット(安全ネット)」と聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
工事現場で資材が落ちないように、回りを囲んでいるネット?それとも、小さなお子さんが階段から落ちないように備えられたネット?

コーチングにおける「セーフティネット」について考えるとき、わたしの頭にはサーカスの空中ブランコの下にあるネットが思い浮かびます。

あなたが生まれて初めて、空中ブランコをしたいと思い立ったとしましょう。あなたは地上13mのジャンプ台に上がり、撞木(バー)を掴んで今まさに飛ぼうとしているところです。
この時、下に安全ネットがあるのと、無いのでは、心理的にどんな違いがあるでしょうか?

地上13mは建物で言うと大体4階建てぐらいの高さ。高所恐怖症のわたしとしては、ネットがあっても「ひえええ」となりそうではありますが、落ちてもネットが守ってくれるなら思い切ってチャレンジできるかもしれません。一方でもしネットが無く、落ちたら床に叩きつけられるかもしれない、という考えが頭をよぎったら、体は緊張してバーを握る手には力が入り、本来の力を発揮することはとても難しそう。。。。

コーチングを通して、クライアントが大きなチャレンジに踏み出せたり、今までは「出来ない」と思っていたことが「出来る」ようになったりするのは、この「セーフティネット」が安心を生み出すからではないかと思うのです。もし上手くいかなかったとしても、受け止めてくれる人がいる。次はどうしたら上手くいくか、一緒に戦略を練ってくれる人がいる。とっても、心強いですよね。

空中ブランコのメタファーで見えてくる、コーチの役割のひとつは「失敗しても大丈夫な環境をつくる」ことにあります。そう、コーチがいたらクライアントは「絶対に落ちない」わけではなく、「落ちることもあるんだけど大丈夫」という状態なんですね。親や上司が「失敗しないようにサポートする」ことが多いのに対して、ちょっと特殊な関係性だと思いませんか。

わたしも起業してから、色んなことにチャレンジしてきました。職人時代とはまったく違う世界だったので、ほとんどが空中ブランコのように見えてたかな。でもコーチがいてくれると「失敗」がそんなに怖くなかった。「そっか~、上手くいかなかったかあ」と、笑ってくれるだろうなあ、受け止めてくれるだろうなあと思っていたから。

コーチングの目的のひとつは、「クライアントが自分のポテンシャルを最大限に発揮できる」ようになること。持っているエネルギーを自分を守るためではなく、目の前の対象に集中できるような状態を生み出すことにあります。そのためには、この「セーフティネット」の存在は欠かせないものなのではないでしょうか。

「セーフティネット」を生み出すには?

「セーフティネット」をコーチが広げている、というのはあくまでもメタファー。そのイメージから想像するに、実際のところ、この心理的なネットをどうやって生み出すかというと、「強さ」「柔軟性」「繋がり」の3つがキーワードなのかなと思っています。

一つ目は、コーチの自己基盤の強さ」です。空中ブランコのネットは、落ちる人の体重を支えられるように、実は意外と硬くて丈夫な材質で出来ています。落ちると、少し擦り傷が出来ちゃうことも多いんだとか。
コーチもまた、クライアントを受け止められる自分でいるためには、「何が起こっても大丈夫」という、自分と相手への信頼が欠かせないように思います。相手が上手くいかなかったときにアタフタしたり、自分の能力を疑うのではなく、どーんと構えて何でもうけとめられるような器の大きさです。

二つ目はコーチの「柔軟性」。空中ブランコからの落ち方は人それぞれですから、相手に合わせて形状を変えられるように、ネットにはある程度のしなやかさがあります。コーチもまた同じで、前のやり方に固執するのではなく、クライアントと一緒に、その経験を学びや気づきに変えて、次に繋げていく柔軟性が求められると思うのです。

最後はコーチとクライアントの「繫がり」。ネットって複雑に紐と紐が絡み合って、その強さや柔軟性を実現していますよね。コーチングにおいて「セーフティネット」があると感じられるかどうかは、コーチとクライアントの信頼関係によって、変わってくるものかもしれません。ネットの強度と柔軟性が上がれば上がるほど、安心して飛べるように、二人の信頼関係が強いものになればなるほど、クライアントもまた、より大きなチャレンジへと挑んでいけるように思います。

「失敗」の定義をみなおす

ところで、あなたにとって「失敗」の定義とはなんでしょうか?

空中ブランコに話を戻すと、多くの人は「落ちる」ことを失敗だと思うような気がします。でも視点を変えてみると、「一度も飛んでみない」ことや、「大技に挑戦しないこと」を、失敗だと定義している人もいるかもしれません。

自分が何を「失敗」だと思っているかを知ることは、とても重要です。なぜなら、それによって、失敗への恐れの種類やその大きさが変わってくるからです。「一度も飛んでみない」ことを失敗だと捉えている人にとって、空中ブランコから落ちることは失敗ではありません。すでに飛んでいるのですから、むしろ成功かもしれません。

コーチングのセッションの中で「失敗しちゃったんです」というテーマを扱う時、大抵の場合コーチは「何を失敗だと感じたの?」なんて質問を切り返してきたりします。もしくは、「おお、ということはチャレンジしたんだね」と、別の視点からのフィードバックを返してくれたりする。

そんな風に「失敗」の定義がアップデートされていくと、以前は恐かったことに恐れを感じなくなったり、それこそ空中ブランコのように、色んなことに挑んでいけるような気がします。

なんていうか、私の中のコーチのイメージって、空中ブランコの下でネット広げているだけではなくて。時々ジャンプ台に上ってきて「うわ~高いね~!」って一緒に気持ちを感じてくれたり。ちょっと離れたところから見ていて、「今、すごいリラックスしてたね~」と成長を伝えてくれたり。そんな風に心の「セーフティネット」を一緒に生み出してくれているのかなあと思ったりします。

因みにコーチングに出会う前の自分の人生を振り返ってみると、「セーフティネット」になってくれた人が、その時その時にいてくれました。それは両親だったり、職場の上司だったり、部下だったこともあるし、友人だったこともあります。

あなたの人生の中で「セーフティネット」になってくれた人は誰だったでしょうか?この人がいたからチャレンジできた。そんな風に思える人。

誰かに「セーフティネット」になってもらって、一歩前へ。
そして、誰かのための「セーフティネット」に。
そんな自分で、ありたいですね。

▼「セーフティネット」を手にして、チャレンジの旅に出かける?

「失敗」は過去に置いてきた忘れ物である ストレングスファインダーを活用して自分のコンフォートゾーンを広げるには?