【10/19(土)】Re:Book~ひとつの物語から始まる対話の空間~「不確実性(Uncertainty)」

セッションのテーマを決めるとき大切にしていること

コーチングは、セッションで何を話すかについて考えるところから既に始まっています。明確なテーマが決まっていれば、限られたセッションの時間を最大限に活用することができるもの。
セッションのテーマを決める際、大切にしていることをまとめました。

テーマには二種類の目的地がある

テーマはいわば、セッションの目的地。クライアントは誰でも何かしらの目的があってコーチングを受けていますから、当然向かいたい場所があるはずです。一方でこの目的地、大きく分けると「どこかへ向かう(Where to)」ものと、「どこかから離れる(Away from)」ものがあるように思います。

「どこかへ向かう(Where to)」目的地とは、例えるなら初めてフランスに旅をしてパリの凱旋門でタクシーに乗り「お客さんどこ行かれます?」と聞かれて「エッフェル塔に行きたいんです」と答えるもの。セッションで言うなら「もっと早く文章を書きたいんです」「部屋を綺麗にしたいんです」「運動の習慣を身につけたいんです」のようなテーマです。

一方で「どこかから離れる(Away from)」目的地とは、「お客さんどこ行かれます?」に対して「凱旋門からできるだけ離れてください」と答えるもの。これは「文章を書くのに時間がかかってしまう」「部屋が汚い」「運動が出来ていない」などをテーマにあげるとき。「自信がない」「話すのが苦手」なんかも、ここに入るかもしれません。

この二つの違い、分かりますか?「どこかへ向かう(Where to)」目的地は、「望む状態」を話しているのに対して、「どこかから離れる(Away from)」目的地は、「望ましくない状態」を話しています。

タクシー運転手の気持ちになってみると、前者は目的地がハッキリしているのに対して、後者は凱旋門から12本の道が広がっているように色んな方向に行けるので「で、どこ行きたいんですか?」と疑問が浮かびますよね。

よくありがちなのは、クライアントが目の前の問題をテーマとして持ってきたとき、コーチ側が勝手に「自信がない」→「自信をつけたいんだな」、「部屋が汚い」→「部屋を綺麗にするには?」と、目的地を置き換えてしまうことです。

コーチングは問題解決の手段ではありませんから、仮に「運動ができていない」がテーマにあがったとしても、そもそもそれ自体は問題ではないかもしれません。クライアントがその状態を一体どう思っているのか、そして何よりも「じゃあ、どうしたいのか?」が見えて初めて、前に進むことが可能になります。

「I want(~したい)」に置き換える

コーチングが機能するためには、明確な目的地が必要ですから、もし仮に「どこかから離れる(Away from)」目的地をセッションに持ち込んだとしても、コーチは「じゃあ、どこへ行きたいのか」を明確にするサポートをしてくれるだろうと思います。「凱旋門から離れてください」と言われて「分かりました」と走り始めてしまったら、無駄に時間がかかったり、クライアントが望まない場所でタクシーを降りることになるかもしれないですから。

一方で私自身がクライアントの時は、テーマを可能な限り「どこかへ向かう(Where to)」目的地に変換してからセッションに臨むようにしています。理由は二つあって、一つ目はセッション時間を有効に使いたいから

例えば上司でも部下でも「誰かとの人間関係がうまくいっていない」ことが気にかかっているとします。その際、関係そのものを改善したいのか、関係性で感じるストレスをどうにかしたいのか、出来るだけ関わらないで済む方法を見つけたいのか、自分が望むものがある程度明確であれば、セッションの最初の時間を目的地の特定に使うことなく、より深いところまで探求するために使えます。

「目の前の状況を自分はどうしたいのか?」という質問について考えること自体は、コーチがいなくても出来るので、セッションの事前準備としてある程度やってしまうわけですね。

もう一つの理由は、脳を前向きでクリエイティブな状態にしたいから。「どこかから離れる(Away from)」目的地について考えている時って、頭の中に浮かんでるのは自分にとって「望ましくない状態」。セッションでもぐるぐるとネガティブな思考の沼にハマるケースがこれまでにも何度かあったんです。

イメージの力って偉大といいますか、「こうなりたい」「こうしたい」を描く方が、「こうなりたくない」「これを止めたい」を描くよりも、思考がクリエイティブになる傾向があると感じているので、普段から意識するようにしています。

もちろんテーマによっては、とことん「こうなりたくない」を話したからこそ見えてくる「こうなりたい」もあるだろうし、セッションの冒頭でコーチと話しているうちに、もしくはセッションの途中でも、目的地がシフトすることは大いにあるだろうと思います。

あくまでも一つの視点として、まずは自分が「どこかへ向かう(Where to)」テーマを決めているか、「どこかから離れる(Away from)」テーマを決めているか、観察してみるといいかもしれません。

テーマを見つけるのに役立つ質問

セッションのテーマを決める際、
「セッションで何を話したいか?」
「セッションでどんなことを扱いたいか?」
のような、直球の質問を立てることも可能ですが、下記のようにやや焦点を絞る質問を立てて考えてみてもいいかもしれません。

  • 今あなたが最も変えたいことは?
  • 今あなたが妥協していることは?
  • 今あなたが我慢していることは?
  • やらなければと思いながら、先延ばししていることは?
  • この習慣が身につくと、より豊かな生活になるだろうと思うことは?

これらはどれも「自己基盤」の観点から自分を観察し、より良いエネルギーの循環をさせるために大切なことばかり。特に「妥協」や「我慢」は些細なことであったとしても、自分のエネルギーが漏れる要因になっていることが多いので、一度リストアップしてみてもいいかもしれません。

「これでいい」と思いながら、使っているものややっていることを、「これがいい」にどんどんアップデートさせていく。因みに私の場合、コーチングを受け始めた当初、リビングの家具をごっそり入れ替えた時期がありました。心のどこかで新調したいと思いながらも、「壊れていないし勿体ない」と自分に言い聞かせて、社会人になった当初から使っている家具を処分できずにいたんですよね。

自分自身をどんな環境に置くか、ということは、それが物であれ人であれ、自己基盤にも大きく影響が出てきます。コーチの世界では「クライアント本人以上に、多くのものを望みなさい」なんて教わることもあるぐらいで、心から望んでいることを解放していくのもまた、コーチングのプロセスの一つかもしれません。

答えの質は、問いの質によって決まります。ご自身のセッションの時間を有効に活用できるような、自分に響く問いを是非見つけてみてください。

コーチングのテーマの選び方 コーチングとは コーチングって何?【2024年最新版】