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コーチに必要な「謙虚さ(Humbleness)」とは? コーチングに与える影響とその重要性

謙虚さとは何か?

謙虚さ(Humbleness)」とは、自分の能力や肩書におごることなく、他者をリスペクトし、控えめな態度のことを指します。コーチングを受けられる状態にある人=コーチャブルの特徴であると共に、コーチ側にとっても非常に重要な要素の一つです。

詳しい内容に入る前に、よく混同されがちな「卑屈さ(self-deprecation)」との違いを明確にしておきましょう。両者は控えめな態度という点では似ている部分もありますが、自己評価が大きく異なっています

  • 卑屈さ(self-deprecation)=自分の能力を過剰に低く見ており、自分の価値を否定しがち
  • 謙虚さ(Humbleness)=自分の強みや弱みを受け入れつつ、自分の価値を肯定している

卑屈さからは「私なんて~」のような自分を卑下する言葉が出てきやすいですが、謙虚さからは「あなたのおかげです」のような他者を立てる言葉が出てきやすいのも違いの一つでしょう。前者は自分に焦点が当たっており、後者は他者に焦点が当たっています。

コーチングはクライアントを中心に据えた対話のプロセスですから、そういう意味でも謙虚さが重要な理由が垣間見える気がします。

謙虚なコーチの持つ姿勢

アメリカのコーチングスクールで出会った、10人以上のMCCとPCCの講師が共通して持っていた要素が、正にこの「謙虚さ」でした。

とても自然体で、人間らしい方が多く、
「私もずっと学び続けている」
「私も失敗する」
「私もまだ知らないことがある」
という姿勢が常にブレません。20年以上経験のあるベテランコーチばかりなのに、学び始めたばかりの受講生といつも同じ目線に立っていたんですよね。

中でも印象的だったのは、あるMCCコーチの
「もしクライアントがセッションの最後に”コーチ、あなたのおかげです。ありがとう”と言ったとしても、”私は何もしていない。ただ聴いていただけ”と言ってはダメ」
という言葉。それはクライアントとコーチの関係性や、聴くことそのものの価値を下げてしまうからと。

「私は聴くことがとても好きなの。そしてあなたの話はとても興味深かった」
と答えることで、自分もクライアントも認めなさいと。謙虚さには他者へのリスペクトが含まれていますが、自分自身へのリスペクトも含まれているのだなあと感じたエピソードでした。

謙虚さがコーチングに与える影響

実際のコーチングセッションにおいて、コーチの持つ謙虚さが重要な理由は大きく3つあります。

クライアントを中心に据えるため

「私が正しい答えを知っている」と思うと、コーチはつい提案や情報提供をしたくなってしまうもの。特にコーチ自身が詳しい分野や、過去に乗り越えたのと似たチャレンジにクライアントが直面していると、その傾向が強まる気がします。私も時々やらかしてしまって、セッション後にひどく反省することも。

自分の経験や知識が正しいとは限らない」と認める謙虚な姿勢は、クライアントの世界観に好奇心を持ち、クライアント自身の答えを見つけるサポートをする上でとても重要です。自分の世界における正しさと、クライアントの世界における正しさは必ずしも同じではないですからね。

パートナーシップを築くため

コーチングが機能する上でクライアントとコーチの信頼関係は欠かせないものですが、それを築く上でも重要な要素の一つに「脆弱性(Vulnerability)」があります。自分の弱さや不完全さを認め、他者に共有できる姿勢です。謙虚さは自分の弱さを認める力であり、脆弱性はその弱さを外に表現して共有する力です。

コーチが自分の脆さを見せられると、クライアントは「この人も同じように悩んだり、失敗したりするんだ」と安心し、心を開いて自分の弱さと向き合うことが可能になります。逆に、弱さを見せないコーチには距離を感じやすく、信頼関係が築きにくくなることもあります。謙虚さと脆弱性、二つが連動することで、クライアントとコーチの間に深い繋がりが生まれていくのですね。

ニュートラルな視点を保つため

コーチがセッションに持ち込まないようにするものの一つに「バイアス(bias)」があります。バイアスは世界の見方を歪めてしまうので、ニュートラルに関わり続ける障害となりやすいからです。例えば「すぐに質問する人は、自分では考えない」というバイアスをコーチが持っていると、クライアントが何かを尋ねた時に過剰に反応するかもしれません。

バイアスはどんな人にも存在し、完全にゼロにすることは難しいと言われています。一方で謙虚さを持ち、「自分にはこういうバイアスがある」と認識していれば、一旦立ち止まってバイアスを脇に置き、客観的にクライアントの世界を見つめる視点に戻ることも可能になります。

最後に

謙虚さというのは、自分を過大に評価することも過小に評価することもなく、「強みも弱みも、ありのままに認めている」状態をいうのかもしれません。

謙虚さを持っているコーチを思い浮かべる時、「ああ、この人みたいなコーチになりたいな」を超えて、「この人みたいな人間でありたいな」と感じる自分がいます。謙虚さは無意識のうちに失われることもあるので、日々自分を振り返り、「自分は今どれぐらい謙虚だろう?」と問うようにしたいですね。

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