この記事は「英語でコーチングを学んでみたい!」という方に向けて書きました。私自身が2021年に英語でコーチングを学べるスクールを探していた時、中々日本語の情報を見つけられず苦労したため、備忘録もかねてアメリカのCoach Uについて詳しく書いています。私の英語レベルは中上級あたりなので、「少し英語力に不安があるけど、チャレンジしてみたい」という人にとって、役立つかもしれません。
Coach Uにはコーチ向けのプログラムの他、リーダーやマネージャー向けのプログラム、コーチングを講師として教えるためのプログラムもあるのですが、ここでは私が実際に1年オンラインで通ったコーチ向けのプログラムについてお伝えします。
記事内の情報は2023年1月現在のものです。最新版のプログラム詳細やコース費用については、Coach Uのウェブサイトをご覧ください。
Coach Uとは?
Coach Uは1992年に設立されたアメリカのコーチングスクール。世界初のコーチ養成機関であり、創設者は「コーチングの父」として世界的に有名なトマス・レナードです。国際コーチング連盟(ICF)の設立にも大きく貢献するなど、コーチングの世界を牽引してきたスクールでもあり、現在もICFのファウンダーやアセッサーなどが講師として多数所属しています。
コロナ前は対面のコースも開催していたようですが、現在はオンライン(Zoom)のコースがメインです。
Coach Uのプログラムの種類
Coach Uのコーチ向けプログラムは2023年1月現在、以下の4つがあります。
Phase 1:78時間のコース
Core Essentials
全科目を15か月以内に修了する
Core Essentials Fast Track
月~金の6日間の集中クラスの後、6か月以内に必要科目を修了する
Phase 2:72時間のコース
Professional Essentials
全科目を15か月以内に修了する
Professional Essentials Fast Track
月~金の6日間の集中クラスの後、6か月以内に必要科目を修了する
Core EssentialsプログラムはICFのLevel1プログラムにあたり、修了するとACCへの申請が、対してProfessional EssentialsプログラムはLevel2プログラムであり、両方修了するとPCCへの申請が可能になります。
英語ではよくコーチングを「サイエンス&アート(Science and Art)」と表現します。とある講師の方はCore Essentialsがサイエンス、コーチングをする上で必要な知識やフレームについて学び実践するプログラム、Professional Essentialsはアート、これまでに学んだことを自由に使っていくためのプログラムになっていると話されていました。
因みに日本などで既にコーチ向けトレーニングを一定の時間以上受けている場合は、Professional Essentialsへの編入も可能です。私も最初に問い合わせたとき編入を勧められたのですが、基礎からがっつりコーチングを学び直したかったため、Phase1のプログラムを受けました。英語力に不安があったため、応用編から始めることへの不安があったのも正直なところ。
ここからは私が受講した15か月間のCore Essentialsプログラムについて、実体験をもとに詳細を書いていきます。
Core Essentialsプログラムの提供方法が変更になり、今後は金~日の三日間集中クラスを一か月空けて二回受けた後、8か月以内に必要科目を修了するスタイルになるようです。
Coach Uのプログラムの開催日時
Coach Uのクラスは一回55分で(集中コースを除く)、毎週同じ時間に開催されるクラスに4~8週間参加することで単位の取得が可能です。生徒用のLearning Centerというオンラインシステムがあり、自分で取りたい科目に登録をしていきます。科目が変わると講師もクラスメイトも変わるため、毎月のように「初めまして」を言っていました。
開催時間は、北米在住の講師が多いためかアメリカ時間の7:00~21:00に設定されているクラスが多い印象。時差が14時間(サマータイム中は13時間)ある日本で授業を受ける場合、夜20~23時、または朝7~9時開始のクラスが比較的参加しやすく、その他は残念ながら真夜中のクラスとなります。
二連続で授業のある講師&生徒に配慮してか、本当に55分ピタリでほぼ終わります。延長しても60分は超えません。また遅刻に関しても講師によってバッファはありますが、10分を越えると欠席扱いとなります。「時間を守る」ことへの意識が高いというか、生徒の時から感覚を磨かれるのはいいかもしれないですね。
Coach Uの授業スタイル
クラスは「反転授業」かつ「ディスカッション形式」です。各科目について事前にA4で20~30ページはあるテキスト(しかも文字がめちゃ小さい!)を読み、「内容について大体理解してるよね?」を前提に始まります。進め方は講師によって様々で、質問をしてクラス全体で話すこともあれば、Zoomのブレイクアウトで他の生徒とディスカッションの後、全体シェアをすることもあります。
Coach Uでは単位を取るためには「会話に積極的に参加すること」が必要です。なので日本の授業のイメージで講師の話を静かに聴こうと思っても、ガンガン名指しで質問が飛んできます。後述しますが、リスニングとスピーキング、両方の力が求められます。また「フィールドワーク」という名の宿題がほぼ毎週出ます。簡単なものもありますが、「プレゼン資料を作る」のような中々重めのやつもそこそこあります。
個人的にはこの反転授業+対話のスタイルは、めちゃめちゃ良かったです。「55分でこれだけのことが出来るんだ!」「こんなに深く学べるんだ!」という驚きもありましたし、実際のコーチングセッションも45~60分に設定されていることが多いですから、短時間集中し続ける練習にもなりました。
また毎週同じ時間にクラスがあるためリズムができやすく、前回の内容もまだ頭の中に残っていて、色々学びが繋がりやすくなる印象もありました。
Coach Uの講師はどんな人?
Coach UにはICFのPCCとMCC認定を受けているコーチが40名以上在籍しています。講師業がメインではなく、実際にコーチとして世界中で活躍している方ばかりで、ICFのアセッサー(録音セッションの評価をする人)やICFのファウンダー、ボードメンバーなどもいて、リアルな実体験やコーチングの今を知ることが出来ます。
8割以上ネイティブスピーカーなのですが、とても端的で分かりやすい英語で話してくれる講師が多く、また海外在住経験がある講師にも何人かお会いしました。インターナショナルの生徒が多いクラスでは、比較的ゆっくり話してくれたりするのですが、ネイティブの生徒のみのクラスになった場合どんどん通常スピードに戻っちゃう講師も…必要に応じて「もう一回説明して」「もう少しゆっくり話して」とリクエストする能力はマストです。
英語を話すスピードはさておき、講師全員に共通しているのは「コーチとしてのあり方」をいつでもどこでも背中で見せてくれること。傾聴、アクノレッジ、質問、フィードバック、がどのクラスでも散りばめられています。スタンスとしても「教える」というよりは、「一緒に学ぶ」「一緒に深める」という感じかな。本当に皆さん個性的で、Coach Uの基盤は守りつつもご自身のコーチングの捉え方や大切にしている価値感をシェアしてくれるので、とっても刺激的でした。
Coach Uの生徒はどんな人達?
Coach Uには世界中から「コーチングを学びたい」という人が来ています。クラスの人数は最小で4人、多いと15人ほどの時もあります。受講していた1年にお会いした方達の平均から言って、8割ぐらいは北米の英語ネイティブ、2割が第二言語としての英語を話す生徒だったんじゃないかと。香港、シンガポール、インド、ギリシャ、スペインなどなど、色んな国から来られてましたね。またCoach Uは現在、日本のコーチエィの傘下に入っているためか、日本人の方にも時々お会いしました。
時差の関係で、クラスの開始時間によってほぼネイティブで構成されるクラスと、インターナショナルなクラスになる時間帯があります。どのクラスでも、皆さんコーチになりたいという思いを持っている方達。傾聴力というか忍耐力が素晴らしく、わたしの拙い英語のコメントにも、承認やフィードバックをしてくださる。これがあったから、一年間走りぬけられたように思います。
日本のスクールと少し異なる?点で言うと、まあ皆さんよくしゃべる。4~8週間おきにクラスが変わって「初めまして」になるわけですが、相手に気遣って気まずい沈黙が流れる、、、なんてことは、まずありません。なので「積極的に対話に参加せよ」というガイドラインがあるものの、コースが始まった初期は自分が話すスペースを手に入れるのにめちゃめちゃ苦労しました。
講師によっては静かめの生徒を名指しで質問して、全員がまんべんなく話せるようにファシリテーションするかたもいるのですが、個人的な学びは「遠慮していると、自分のターンは絶対にやってこない」ですね。日本で周りに配慮してもらうことや与えてもらうことが当たり前になっていた自分に気づいて、正直最初は愕然としたのですが、「自分のチャンスは自分で掴む」「主体性を育む」という意味ではすごく良いトレーニングになったような気がします。
Coach Uの学費について
Core Essentialsプログラムの学費は、6,095USドルです(Fast Trackも同じ)。早割で500ドルOFFになる他、Phase2のProfessional Essentialsを同時に申し込むと、さらに割引があります。実は私が申し込んだ2021年11月に比べると1,000ドルほど値上がりしていて、おそらく今後も上がる可能性があるかもしれません。
Coach Uに必要な英語力
Coach Uに行くか迷っていた時、一番気になっていたのは「自分の英語力でいけるのか?」でした。前述したとおりインターナショナルの生徒も普段から仕事で英語を使っているような方がほとんどで、私の英語力は限りなく一番下のレベルに近かったわけですが、結果的に修了まで辿りつけました。
とはいえ、Coach Uのプログラムを受講するには英語のリスニングとスピーキング力は必須、リーディング力は事前準備に必要、それに加えてライティング力が時折フィールドワークの中で求められます。
参考までにわたしの英語力をお伝えしておくと、IELTSのバンドスコアが7.0、昔ケンブリッジ英検のCAEに合格したことがあります。といってもこれはオーストラリアに住んでいた10年以上前の話で、日本に帰ってきてからは英語を使う機会は無かったため、現在のレベルは中上級ぐらいかなと。Camblyというオンライン英会話で、英語の先生と週2日30分話すぐらいです。
おそらくコース開始当初は色々戸惑うことが多いかもしれませんが、毎週山のような英語の資料を読むことになるので、自然とボキャブラリーは増えますし、必然的に英語力も伸びていくように感じました。
Coach Uに行こうと思った理由
ところで、そもそもなぜ私がCoach Uに行ってみたいと思ったかというと、ICFの資格を目指すプロセスの途中で「英語でICFのコアコンピテンシーを学びたい」という思いがあったからなんです。日本でも承認、傾聴、質問などコーチングの基礎的なスキルがありますが、それぞれをどう定義するか表現するか、コーチによって違いがあるなあと。
学ぶ言語が変わるということは新しい視点がひとつ増えることなので、Coach Uに行けばより多角的にコーチングを捉えて、自分なりの表現をしやすくなるのではないかと考えたんですね。コーチの先輩方からは「CTIのほうがいいんじゃない?」というアドバイスも貰ったのですが、ICFを設立したトマス・レナードが創設者であることや、世界初のコーチ養成機関でもあることから、限りなく源泉に近いコーチングに触れられるのではないかという期待がありました。
因みに日本語で言うフィードバックは、英語では「Messaging」というカテゴリに入るんですよ。Feedbackじゃないんです。これだけでも、フィードバックの印象が少し変わりますよね。
Coach U で受けて良かったこと
Coach Uで学べて良かったと思うことは色々ありますが、その中から個人的TOP3をピックアップすると:
- 色んなコーチのスタイルを知れた
1年間のコースの中で9人のMCCコーチと2人のPCCコーチから学んだのですが、クラスの中で15~20分のデモセッションを見る機会があり、本当に多様なスタイルがあるんだなと感じました。コア・コンピテンシーにその人らしらが加わった、限りなくナチュラルなセッション。日本で学んでいた時よりも、「もっと自由に表現していい」ということを知れたのが、私にとっては一番価値があったように思います。
Coach Uでは「コーチングをすること(doing Coaching)と、コーチであること(being a Coach)は別物である」と教わります。なんというか、一つの生き方としてコーチであることを選んでいる講師ばかりなんですね。なのでクラスの中でも、外でのメール等でのやりとりでも、インスピレーションをもらいっぱなしでした。将来はこういうメンターコーチになりたい!と思わせてくれるような、ロールモデルにも出会えました。
- 選択する力が上がった
Coach Uの特徴の一つは、配布される資料がとんでもなく多いこと。各科目のテキスト以外に補足資料やクライアント向けのアセスメントなどが山ほどあり、それに加えて各クラスの講師がおすすめの本、動画、記事などへのリンクをじゃんじゃん送ってくれます。物理的に全てを読むことが難しいため(おそらく日本語でもツライ)、必然的に「どれを捨てるか」という思考になり、自分に響くもの&必要なものを選び抜く力が付いたように感じます。
因みに情報量の多さはネイティブの生徒からもクレームがあるらしく、講師からも「自分がピンとくるものだけ読んだらいいのよ」と言われておりました。自己基盤の強化にも力をいれているため、専門の科目もあり、自分にもクライアントにも使える情報が実践的な情報が多かったのは有難かったです。
- Coaching関連の英語力が上がった
単純にクラス準備のためのテキストを読むだけでも毎週数十ページあるため、日常英会話では使わないような英単語のボキャブラリーが増えました。読む機会も、耳にする機会も圧倒的に増えますから。あとは英語のコーチングの質問を聴く機会も増えるので、日本語でコーチングをしている時にも、質問のバリエーションが多くなったように感じます。直訳するとやや変な文章になるので、アレンジは必要ですが。
Coach U で受けて残念だったこと
Coach Uで唯一残念だったことは、クラスの開催日程がアジアのタイムゾーンの生徒にはやや苦しいこと。本来は好きな時間と講師を選べるはずなのですが、香港のクラスメイトともよく「わたし達、選択肢が一つしか無いよねー!」と笑ってました。科目の取り方にも、自由に選べるものと、予め特定の単位を取らないと登録できないものがあるので、これからCoach Uに行こうと思っている方は、期間中は時間的余裕がかなりある状態にしておくことをお勧めします。
Coach Uの学びを次のステージへ
アクノレッジ(承認)の定義が思っていたよりずっと広かったことや、「質問はクラフトするもの」、「課題ではなく、人をコーチせよ」などなど、Coach Uでの学びはパワポで250枚でもまとめきれないぐらい価値のあるものでした。今後はメンターコーチングの中で、コーチの方の資格取得やスキルアップのサポートをするときに、この学びをシェアしていきたいなと思っています。
これから英語でコーチングを学ぼうとされている方は、是非めげずにチャレンジしてみてください。普段から英語を使っているわけではない私でもなんとかなりました。完全にコンフォートゾーンの外に出ることになるので、壁にも色々ぶつかりますが、得られるものはめちゃめちゃ大きいです。素敵な冒険の旅になりますように!
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