この記事ではストレングスファインダーの34資質のひとつ、「原点思考(Context)」の持つ世界観やその活かし方について書いています。
原点思考は背景を描く
原点思考はつい「歴史が好き」みたいなイメージを持ちやすいのですが、上位に持つ人に話を聴くと、その英語訳である「Context=文脈」のほうがしっくりくるという人も多いようです。
原点思考は今を理解するとき、その背景に目を向けます。ある一つのことに対して、できるだけ緻密で完全な絵を描きたいのです。前景と背景、歴史や文化、人、場所などもそこには含まれます。
内省と同じようにとても深い思考パターンをもつ原点思考は、ルーツを辿ることによって文脈全体から物事を把握しようとします。
「どのように始まったのか」
「どんな経緯があって今に至ったのか」
は、原点思考にとってとても大切な問い。物語を第3章から読んだのでは、今を正しく理解できないのです。
できるだけ詳細な背景を描くため、原点思考は過去を旅します。
それは物事が始まってから今へと至るタイムラインに、今を理解するための鍵が眠っていることを知っているから。世界的に見ても持っている人の数が少ない、とてもユニークな資質です。
原点思考は記憶する
原点思考は別名「Recorder(記憶する人)」とも呼ばれています。それは彼らが持っている、人並み外れた記憶力のせい。例えば10年以上も前に交わした会話や、訪れた場所、こういったものを事細かに覚えていることが多いのです。
常に覚えている、という訳ではないらしいのですが、懐かしい場所を訪れたり、誰かに過去について尋ねられると、それがトリガーとなって記憶が鮮やかに蘇る、独特な才能です。
人は忘れる生き物です。生まれてから今までの間に、成し遂げてきた多くのことや、経験してきた色々なことを、いとも簡単に忘れてしまう。前は嫌でも向くことができますが、後ろは意識しないと振り返ることが難しいもの。
そんな中で、この原点思考の過去を記憶する能力は、周りの人にとっても価値のあるものだろうと思います。
原点思考を時に触れさせる
原点思考は、「歴史を感じる場所が好きだ」という人が少なくないようです。そこにいるだけで、時の流れを感じさせてくれる空間。それは例えば、「兵どもが夢の跡」を思わせるような草の生い茂る城跡であったり、当時の面影を残したままの木製のアーチ橋や、古代の神殿へと続く石造りの階段かもしれません。
特別な何かをするでもなく、ただその場所に佇み、過去に思いを馳せる。
何百年も前に暮らしていた人々。
何千年も前に栄えていた文化。
それは原点思考にとってとても特別な、そして内側にエネルギーが満ちるのを感じられる時間でもあるようです。
原点思考で物語を聴く
原点思考を人の背景に対して向けると、相手との関係性を築くのに役立ちます。生い立ちや出身地、そして文化的背景。どんなタイムラインがあって、今その人がここに立っているのかを知るとき、原点思考の心は躍るのかもしれません。
今と過去は別々に存在しているのではなく、繋がっているもの。これまでに経験してきた全てが、今のその人を形作っているのだから。
人は信頼関係があるから自己開示するのではなく、自己開示をするから相手と信頼関係ができるのだ、という話があります。相手の背景のまだ見えていない部分に、原点思考ならではの問いを投げかけてみる。相手の物語を、より詳細に聴いてみる。
それはきっと相手との間に、より強い信頼の橋を架けるものになるだろうと思います。
原点思考で信頼を得る
どんなふうに記憶し、何を記憶し、なぜ記憶しているかによって、各個人の心の地図が作られる。
ークリスティーナ・ボールドウィンー
とてもユニークな観点をもっている原点思考。チームのなかではどんな一面を見せるのでしょうか?
例えばチームのなかでミスがあったとき、今見える景色だけで判断(ジャッジ)をしたり注意してしまうことは少なくないでしょう。上司に頭ごなしに叱られると、人はやる気をなくしてしまったり、「理由を話してもムダだ」と自分について話すことを止めてしまうかもしれません。
原点思考のリーダーはメンバーの物語も、チームの物語も知っています。
必ずそのミスの背景を探ろうとするので「まず経緯を教えて?」と問いかけるでしょうし、時には相手以上に背景が見えていることもあるので、「もしかして、こうなってこうなったからミスしたの?」と、相手が思わず大きく頷いてしまうような、鋭さを見せるかもしれません。
相手の物語を記憶している原点思考は、周りの人々が忘れてしまっているような、相手の人生の分岐点になった出来事や、チームにとって価値のある出来事を思い出させることができます。それはしばしば、今ある物事を進めるためであったり、相手が勇気を取り戻して前に進むためのキッカケになることがあるようです。
「自分を知ってくれている」「物事の背景を知ろうとしてくれる」ということは、周りにいる人にとって、とても大きな安心感を得られる、原点思考の類稀な強みの一つです。
この世界の物語を誰よりも記憶している原点思考。
わたしが愛してやまない世界の一つです。