”完全なオリジナルなど存在しない。優れたアーティストは盗む”
なんて言葉から始まっている時点で、すでに興味をそそられるこの本。これまで人間がやってきた様々な事がA.I.に取って代わられた現代社会において、今私たちにはA.I.にはない感性や創造力を磨くことが求められています。
自分の中にあるクリエイティブな領域を磨きたい全ての人におススメの本が、
「クリエイティブの授業(Steal like an Artist)/Austin Kleon」
ネットでクリエイティブ関連の書籍を探していた時にたまたま出会ったのですが、こんなにも付箋を貼った本は他にありません。文章はとってもシンプルで読みやすく、かつ深くてインスピレーションに溢れていて、職人時代に知りたかったぐらい刺さる内容でした。
創作活動を難しくしてしまう理由のひとつは、「ゼロから生み出さなければいけない」とどこかで思ってしまうから。でもこの本を読めば、もっと軽やかに、自由に、創作ができそうです。
デザイナーや職人などその道の方はもちろん、SNSやブログで自己表現にチャレンジされている方、アーティストのようにクリエイティブな思考を手に入れて人生に活かしたい方にも、とにかくおススメ。
以下本の内容から印象に残ったことを3つ、紹介します。
アーティストのように世界を見る
When you look at the world this way, you stop worrying about what’s “good” and what’s “bad”ーthere is only stuff worth stealing, and stuff that’s not worth stealing.
「Steal Like an Artist / クリエイティブの授業」
こんな風に世界を見るとき、何が良くて何が悪いかで悩むことは無くなるだろう。盗む価値があるか、盗む価値がないか、ただそれだけになるのだ。
人それぞれに見えている世界が違う、というのはよく言われることですが、職業によっても世界の見え方の特徴ってあるなあと感じます。例えばライターの場合は、日々の出来事を「どう記事に活かせるか」という視点で見るようですし、私の職人時代は休日見ている景色も雑貨も、「どう料理に活かせるか」という視点を常に持ってました。
この本に書かれているアーティストの世界の見方は「それは盗めるものがあるか、否か」。創作活動をしているときって、例えば世間で評価を受けているものをみて、良い、悪い、の判断をしてしまうことがあります。でも私の経験上、感性の世界って実のところ主観的な判断でしかなくて、ある一定のレベルを超えてくると特に、自分の好みかどうかで評価がつくこともよくあるんですよね。
もちろんそこから学べることも大いにありますが、この見方のデメリットって、自分自身の作っているものにも良い悪いのジャッジをしてしまうところ。良し悪しってある種正解を追いかけることになるので、視界も狭くなるし、クリエイティブからどんどん遠ざかってしまう。なのでこの本の著者の方は、盗めるかどうかで世界をみるといいよ、と提案しています。
自分のスタイルがそれなりに見えてくるまでは、憧れの人をお手本にまずは真似てみるのは、アーティストによくある共通点。ただ「盗みの作法」みたいなものはあるかなと思っていて、近場で真似るとただの「パクリ」になっちゃいますね。フレンチの職人が別のフレンチの職人の料理を真似ると、ビックリするぐらいすぐバレます。。。
ネットで色んなものが手軽に手に入る今は、文章でもなんでもコピーしやすいんですが、見ている人は見ているのでそこは注意したいところ。ではどうすればいいかというと、
・一人ではなく複数の人から盗むこと
・その人のスタイルの裏側にあるマインドを盗むこと
がポイント。
複数の人から、特に違う分野からも引っ張ってくるって、すんごい大切だと思っていて。A.I.が発達している今は、広告でもSNSのタイムラインでも、自分が普段見ているものでA.I.が自動で好みを判断して、知らないうちにけっこう狭い範囲の世界を見ていることが多いです。なので意識して、全然違う世界を見に行ってみる。その世界での自分の好みを見つけて、何を盗めるか観察してみるのは欠かせない。
職人時代にわたしがやっていたことで言えば、フレンチのお隣、日本料理や和菓子の世界に出かけてみたり、京都らしさがテーマの一つだったりしたので、JR東海の「そうだ、京都行こう」のポスターにヒントをもらうこともありました。
それからスタイルそのものをコピーするのではなくて、相手の世界の見方を少しでも盗むこと。表面だけ真似ると、オリジナルの劣化版みたいになること多いですね。そうじゃなくて、自分の憧れている人が、どんなふうに世界を捉えて表現しているのかを観察してみる。
なぜそれはそんなに美しいのか。どんなことを意識しながら創っているのか。もちろん全部は分からないし、想像でしかないけれど、創作の裏側にあるマインドについて考えを巡らせてみることで、アーティストのような世界の見方が少しずつ磨かれていくと。
反応をもらえることではなく、好きなことを
Draw the art you want to see, start the business you want to run, play the music you want to hear, write the books you want to read, build the products you want to use, do the work you want to see done.
「Steal Like an Artist / クリエイティブの授業」
自分が見たい絵を描き、自分がやりたいビジネスを始め、自分が聞きたい音楽を演奏し、自分が読みたい本を書き、自分が使いたい製品を作り上げ、自分がやってほしい仕事をやろう。
当初は純粋な「好き」から始めていたとしても、創作活動を続けるうちにどうしても気になってしまうのが周りの反応。SNSなら”いいね”やシェア、フォロワーの数かもしれないし、デザイナーや職人の場合も顧客の反応は中々無視できるものではありません。そうすると次第に思考は「何を書くのが正解なのか」「何を作れば喜んでもらえるのか」という方向に向かってしまう。
昔職人をしてた頃に、常連客の好みを参考にデザートを創ったことがあったんですよね。作っている時から答えの無い正解をずっと探し求めてるみたいで全然楽しくなかったし、仕上がってからもなんだか自分の創作ではないような感じで気に入らない。そしたら、仲良くしてたサービスの人から”(このデザートは)あなたらしくないね”って言われたんです。グサリときました。。。
批判されないこと、全てのお客様に好まれることを気にしてたら、自分が持っているはずの尖りが全部丸くなって、なんとも味気ない平凡なものが出来ちゃった。で、自分がしっくりくるものを創ってる時はどうやってたんだっけ、と振り返ってみたら、ただただ素材と向き合って、どうしたら美味しくなるか面白い表現が出来るか、そればっかり考えてたこと思い出したんです。
今はわたしの表現の場は料理から文章やワークショップに変わりましたが、自分が作ったものを見て「やっぱ好きだわ~」「やっぱ綺麗だわ~」みたいに自分の心に響くものを創り続けるのって、すごく大切だと思っていて。アーティストや職人さんに限らず、自分自身が好きなものを形にしている人ってなんかこう、惹きつけるオーラありますよね。
数字って分かりやすい指標なので、SNSとかでは私も時々気になっちゃう→クリエイティブさが鈍ること、起きますが、自分の「好き」をいつでも大事にしたいな~とこの本を読むたびに改めて思うのです。
表現することは、自分の世界観を磨くプロセス
Start copying what you love. Copy, copy, copy copy. At the end of the copy you will find yourself.
「Steal Like an Artist / クリエイティブの授業」
ーYohji Yamamoto
いいと思ったものをコピーしよう。コピー、コピー、ひたすらコピー。その先に自分が見つかる。
わたしの知り合いで、その界隈ではかなり有名なブログを書かれているライターの方がいて、その方が以前言っていたのが「文章はコピーできるけど、世界観はコピーできない。だから世界観を磨くのが大事」。
有名なシェフが料理本でレシピを公開しても、全く同じものを創ることは誰にも出来ません。そこにはその人の今までの経験とか、大事にしている価値感とか、その人だけの世界観を生み出している要素があって、その人と同じ人生でも歩まなければ、完全なコピーは出来ないんですよね。文章も同じなのかなと。
じゃあそもそも、自分の世界観てどうやって磨いていくのかというと、それこそ表現をするプロセスの中で、どんどん明確になっていくのだと思います。
何かを表現する前から、自分が表現したいものが明確に見えていることって、実はあまり多くなくて。頭の中にイメージがあっても、いざ形にしてみるとしっくりこないこと、よく起こりますし。そこからブラッシュアップを重ねて、自分の心に響くものを創り上げるプロセスこそが、自分を知る、自分の世界観を磨いていくことに繋がっていく。
だから表現することを始めなければ、続けなければ、ずっと分からないままなんですよね。自分の世界観って。
わたしは自分の持っている世界観ってどんどんアップデートされていくものだと思っていて。これが自分のスタイルかな~ってぼんやり思えるようになったのは、創作を始めて3年ぐらい経った頃で。そこから3年経ったら、もっとしっくりくるスタイルが見つかって、以前のものは旧式?のように見えてました。そうやって表現しながら、もっと自分の心に響く何かを追い求めながら、新しい「わたし」に出会ってバージョンアップしていくのかなと思います。
「クリエイティブの授業」は、一つの生き方の提案
「何を盗めるか」
という視点から世界を見つめると、もうありとあらゆる場所が学びと発見の場になります。これ創作だけじゃなくて、人生においても、大切なことじゃないでしょうか。
正解とされるものが次の瞬間には変わってしまうような変化の速い時代なので、自分の心に響くかどうか、という感性を磨いていく力って、今すごく必要性が高まってきています。
「クリエイティブの授業」にはここで紹介した以外にも全部で10の項目で、アーティストの物の見方やアイディアが書かれており、日本語版または英語版での購入が可能です。クリエイティブな生き方をするためのヒントが、たくさん詰まっているので、、興味のある方は是非一度読んでみてください!
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世界観は内側と外側の共鳴 「感性」とは見えないものを見るセンスである▼自分の世界観を言語化していくサポートはコチラ。