コンフォートゾーンを出るかどうかは、私たちにどんな影響を及ぼすのか

安心の領域とも呼ばれる「コンフォートゾーン」は、私たちが誰でも持っているもの。「コンフォートゾーンと成長の領域」にも書いたのですが、そこを出るかどうかは「個人の判断」に委ねられていると思っています。人生には色々なことが起こりますし、それぞれのタイミングがあると思うので。

一方で、自分がコンフォートゾーンを出るのを阻む外的要因は何も無くて、自分の心ひとつでどちらにも行けるという場合。コンフォートゾーンを出ることを選ぶか、出ないことを選ぶか(変化を起こそうとするかどうか)で、どんな違いが生まれてくるのでしょうか?

私自身にとって「人生で一番大きな変化」は、16年やっていた職人から個人起業したとき。しかも職業をコーチに変えていますから、ダブルでインパクトのある変化でした。この記事では、その経験の中で感じたことも織り交ぜながら「コンフォートゾーンを出るかどうかが与える影響」について、それぞれのケースについて考えてみたいと思います。

コンフォートゾーンと成長の領域」に書いているコンセプトを元にしていますので、まだ読んでいない方は先にそちらを読んでいただくのがお勧めです。

コンフォートゾーンの4つの領域 コンフォートゾーンを広げる「成長の4つの領域」

コンフォートゾーンを出ないことで起こりうる影響

現状を変えたいという思いがあるにも関わらず「コンフォートゾーンを出ない」ことを選んでいる場合、以下のようなことが起こりうるかもしれません。

成長の停止

植物を鉢植えで育てる時、小さな鉢を使うとある一定以上の大きさには育たなくなります。コンフォートゾーンの中に留まり続ける、それは言葉を変えると「成長が止まってしまう(又は非常にゆっくりになる)」ことを意味するかも。コンフォートゾーンとは「いつもの〇〇」であり、そこには変化がありません。何も変えなくても普通に生きていけるため、キャリアや個人的な成長が遅れてしまうことがあります。

自信の欠如

やってみたいことがあるにも関わらず、チャレンジしない状態を続けていると、自分に自信が持てなかったり自己肯定感が低くなりやすいかもしれません。というのも、その際頭の中で「私には出来ない」「私はダメな人間だ」などのセルフトークが起こり、自己評価を低くする連鎖になりやすいから。
コンフォートゾーンの中に留まることを「洞窟」に例える時、それは洞窟から全く出ずに生きることを意味します。外の世界を知らないということは、聞こえてくる生き物の咆哮や天気の移り変わり、様々なことが「見えない」「分からない」という状態ですから、漠然とした不安を抱えやすかったり、ちょっとした変化に対してもストレスを感じやすいかもしれません。

ルーティン化による飽き

「いつもの〇〇」の良さは、考えないで済む&決断の回数が減ることによる、効率性や居心地の良さです。一方で、同じことをずっと繰り返していると、全てがルーティン化され飽きやすくなる可能性があります。コンフォートゾーンの中に留まることを(無意識にでも)選んでいると、もしかすると色んなことについて「面倒くさい」と感じやすくなるかもしれません。
また見ている世界が限定的になりやすいため、様々な視点から物事を捉えようとするのではなく、(自分でも気づかないうちに)ある一点からの物の見方を「正しい」と信じやすいかも。

機会の損失

人生を将棋やチェスに例える時、ある一つの駒を動かすことによって、様々な可能性の扉が開いたということはよく起こります。コンフォートゾーンの中に留まるとは、駒を動かさずに現状維持するということ。それによって、様々な機会が失われる可能性があります。例えば新たな学びや経験を積むための機会、自分に刺激を与えてくれるような人と知り合う機会、異なる視点を手に入れる機会、人としてもっと成長する機会などです。

モチベーションの低下

幸せホルモンとも呼ばれる「ドーパミン」は新しいことや困難なことに取り組むことで、分泌されます。このドーパミンが出ているかどうかは、私たちのモチベーションを大きく左右するそうです。コンフォートゾーンの中ではこのドーパミンが出る機会が少ないため、モチベーションが低下しやすくなります
またモチベーションが高いとは、ある特定の物事に自分のエネルギーが集中している状態です。コンフォートゾーンの中では特に注意を向けなくても出来てしまうことが多く、エネルギーを注ぐべき「明確な対象(目標)」が無いため、やりがいや達成感を感じにくいという側面もあるかもしれません。

自分の職人時代を思い返してみると、不思議と「自信の欠如」や「機会の損失」はあまり感じたことがありませんでした。で、よくよく考えてみると、「成長を感じられない」「飽きてきた」「モチベーションが上がらない」みたいな状況になると、私いつも転職をしていたんですよね。

トータル16年この世界で働いていましたが、最長でも3年までしか同じ企業に所属したことが無く。内半分ぐらいは海外二か国にいましたから、おそらく私の場合は性分として「現状維持が嫌い」というのがあるのかも。

仕事の種類にもよると思うのですが、一年いると全体の流れは大体見える。二年目はそれを「より良く」することを楽しめるのですが、三年目あたりになってくると段々飽きが生じてきて、、、。もちろん新しいメニューを開発するとか、小さな「新しいこと」は生み出せるんですけど、職業柄部署を変えるのも難しかったので、新しい会社で出来ないことが出来るようになっていく達成感に比べると、どうしても成長を感じにくかったんですよね。

以前は一社で長く働けない自分を「どうなんだろうなー」と思っていた時期もありました。ただ、転職回数が人より多い分「新しい環境に早く溶け込む」というのが得意にもなり、色んな働き方、考え方、に触れられる良い経験が出来たと今では思っています。会社の文化としての「当たり前」って、気づかないうちに自分の思考パターンやビリーフ(信念)にも影響していて、内側にいるとその視点が固定されていることに、自分では気づきにくいので。

と、ちょっと話がそれちゃいましたが、、、コンフォートゾーンを出ないことを選んでいる場合、安心や心地良さと引き換えに、やりがいや達成感、成長などを手放すことになるのかもしれません。

コンフォートゾーンを出ることで起こりうる影響

コンフォートゾーンを出ることで起こりうることは、基本的に上に書いたことの逆を考えてみるといいのかなと。具体的には以下の5つです。

成長と学習の促進

近年変化の速い状況下でも使えるフレームワークとして「OODAループ」が注目されています。これは「観察する(Observe)」→「方向づける(Orient)」→「意志決定(Decide)」→「行動(Action)」の頭文字を取ったもの。コンフォートゾーンを出る時、人は自分の目と耳で聴き主体的に意思決定をして動くことを頻繁に求められます。そのためこのOODAループを回しやすく、成長と学習のスピードが速くなります。
またチャレンジをするということは、現状の自分のままでは成し遂げられないことに挑んでいくということ。自分の限界をストレッチさせることによって、潜在ポテンシャルが発揮されやすくなり、大きな自己成長へと繋がります。

自信の向上

新たなチャレンジをする時、そこには失敗やリスクが当然あります。それでも自分が目指す目的地へ向かって進もうとすることによって、困難を乗り越えていく力や粘り強さが育まれ、自分への信頼が増し、自己肯定感が向上します
また目指す目的地に辿りつくために、新しい能力やスキルを身につける機会も増えます。これはただ「知識を学ぶ」のとは違って実践の中で「自分のものになる」ことが多く、またそのプロセスで他者からの肯定的なフィードバックをもらうチャンスも増えるため、必然的に自信の向上へと繋がります。
コンフォートゾーンを出るということは「自分自身と向き合う旅」でもありますから、自己理解が深まり、より客観的に自分を見られるようになるのも大きな特徴のひとつでしょう。

創造性の向上

人の脳が最も創造的になれるのは、完全に自由な時やリラックスしている時よりも、一定の制限がある時だと言われています。コンフォートゾーンを出ると様々な壁にぶつかることになり、脳が本来持っているクリエイティビティが活性化されやすくなります。新しい世界では新しいものに出会う機会も増えるため、好奇心がかき立てられることで様々なインスピレーションも得やすくなるでしょう。
因みに私はこの状態を「気づき体質になる」と呼んでいるのですが、思考が世界に対してとてもオープンな状態になることで、様々な物事が繋がりやすくなり、気づきの瞬間が多くなるように感じています。

機会の拡

コンフォートゾーンを出ると、自分の世界が広がります。色んな人や考えに出会うことで視点の数が増えたり、視座が上がって、世界をより俯瞰して見ることができるようになります。それによって、これまでには気づいていなかったチャンスを掴めることもありますし、「学びや成長」の機会も必然的に増えていきます。
類は友を呼ぶ」という言葉がありますが、自分の夢に向かって頑張っていると、同じようにチャレンジし続けている人にも遭遇しやすくなります。そういった出会いも含めて、自分の人生をより良くできる機会は広がるだろうと思います。

モチベーションの向上

モチベーションは「フロー状態(Flow)」と密接な関係があります。フローとは、スポーツなどでは「ゾーンに入る」という表現もされる、超集中した状態です。フローを提唱したチクセントミハイによれば、この状態に入るための条件には7つあるのですが、そのうち少なくとも次の3つを満たす必要があると言われています。
①目標が明確であり、何のために自分がそれをやるのか分かっている
②自分の行動に対するフィードバックがある(目標に近づいているか、遠ざかっているか分かる)
③自分の能力よりも少しだけ高いレベルの挑戦である
コンフォートゾーンを出る、特に「成長の領域」まで行けた場合には、これらの条件を非常に満たしやすくなり、モチベーションを保ち続けることが容易くなります。

私は職人の世界を卒業すると同時にコーチングを学び始めて起業したのですが、特に最初の一年目は新しいチャレンジしかない生活でした。それまでは決まった仕事をしっかりやっていれば、毎月決まった金額のお金が振り込まれる安定した生活だったわけですが、もう本当に右も左も分からないような状況になりましたから。

もちろん新しいことの連続でたくさん壁にぶつかったし、自分の能力の無さにガッカリすることもありました。ただ、この不安や恐れと向き合う時って、一番自分を発見できる好機でもあって、人として成長する機会や自分自身を知る機会は本当にたくさんあったなあと。

転職したり、海外生活をしたり、という「コンフォートゾーンを自分で出る経験」はこれまでにもしてきていたので、それも自信の一つになってくれたかもしれません。

因みに私の場合は転職や起業がコンフォートゾーンを出ることに繋がっていますが、同じ企業に長年勤めながら新しいチャレンジをしている人達もたくさん知っています。コーチ仲間だと、社内で人材育成や1on1面談の普及など「組織改革」に積極的に関わっている方が多いでしょうか。

同時に彼らは副業として社外でも講座やワークショップ、個人セッションなど活動の場を広げることで、常に多くの視点を得られるような環境を整えている印象があります。

環境をガラリと変えることは当然大きな変化にはなりやすいのですが、今いる環境の中でも新しくチャレンジできることは色々あるかもしれません。何よりもまず「自分はどうしたいのか」、その思いを知ることが大切な気がします。

コンフォートゾーンを出ると、「安心の領域」が広がる

コンフォートゾーンを出ることで得られるものは色々ありますが、なんといっても一番大きいのは「自分のコンフォートゾーンが広がる」ことではないかと思っています。

例えば決まった洞窟で常に過ごし、たった一か所の水場しか知らなかったら、「もしこの水が干上がってしまったらどうしよう」「この洞窟が崩れてしまったらどうしよう」と、不安をずっと抱えながら生きていくことになるのではないでしょうか。洞窟の外を探検し、いくつもの水場や狩場を知っていたら、「まあ、何かあっても別の場所で生きればよい」と安心していられます。

コンフォートゾーンが広がるとは、これまでには見えなかった、もしくは手に入らなかった「選択肢が増える」ことでもあるのです。変化の速い現代において、たった一つの何かを拠り所にすることほど頼りないものはありません。他にも選択肢があることを知っていれば、私たちはより自由に選ぶことが出来ます。

自分が安心して自分らしくいられる「安心の領域」が広がれば広がるほど、私たちはより生きやすくなります。それは、たった一度のこの人生を生きる上で、とても大切なことでないかと思うのです。

コンフォートゾーンを出られない時に、起きているかもしれないこと

「コンフォートゾーンを出たい」と強く思っているものの、中々上手くいかないという人も中にはいるだろうと思います。上記で上げた「フロー状態に入るための三つの条件」は、コンフォートゾーンを出るための条件としてもヒントになるかもしれません。

まず一つ目の「目標が明確であり、何のために自分がそれをやるのか分かっている」なのですが、中々出られないという人の傾向として目標がかなり「ふわっとしている可能性があるかなと。

明確な目標とは、例えるなら「私は40歳の誕生日にスカイツリーに登りたい。なぜなら、上から東京の景色を眺めてみたいから」のようなもの。フワッとした目標はただ「東京に行きたい」のように、的が絞られていない状態ですね。

もしあなたの目標が「起業したい」「転職したい」のような大まかなものだとしたら、それはかなりフワッとしているかも。同様に「自分が何のためにそれをやるのか」が明確になっていない、または仮にあったとしても他者や世間からの評価が主軸になっている場合も、自分なりの理由が明確でないためコミットしずらく行動の継続が難しいかもしれません。

で、このフワッとした目標というのは、二つ目の「自分の行動に対するフィードバックがある」にダイレクトに影響しちゃいます。というのも、目標がアバウトな状態だと、そもそも目標に近づいているか、遠ざかっているかがとっても分かりにくいから。高尾山には近づいたけれど、実はスカイツリーからはすんごく離れてた、なんてこともありますし。

フィードバックが得られるかどうかは、「自分が前に進んでいる感覚」を感じる上では欠かせないものです。ですから、ここが得られないと中々辿りつけないように感じられて、諦めてしまうこともあるかもしれません。

三つ目の「自分の能力よりも少し高いレベルの挑戦である」も、とても大切なポイントです。「いつもの自分」でやれることは、おそらくコンフォートゾーンの内側の話でしょうし、「理想の自分」じゃないと出来ないことはとても手が届かないように感じられて、そもそも行動に着手できない確率が上がります。レベルが低くても、高すぎてもダメなんですね。ちょっと背伸びしないと届かないぐらいが、ちょうどいい

コンフォートゾーンを出ることが中々上手くいかない、という人は、この三つの条件を見直してみてもいいかもしれません。

また「出る」ためには、「行動が必要」だということを忘れずにいましょう。変化を起こしたいと願っていても、「実際にやってみたこと、試してみたことは何ですか?」と問われると、頭の中でアレコレ考えるだけで何も動いていなかったことに気づかされることもあります。

行動を起こすからこそ、目指しているゴールがより具体的になりますし、行動へのフィードバックが手に入ります。それが自分の今の能力に対して、高すぎないレベルで設定されているかどうかが分かります。動いていなければ、どれも手に入りません。

試行錯誤しながら進む

これは、私自身がセカンドキャリアである「コーチ」としての活動をやっていく上で、学んだことのひとつです。旅を始めれば、助けてくれる人や、必要な情報は、自然と集まってくるようになります。「コンフォートゾーンを出る」というよりも、目の前のことに集中していたら「気づいたら出ていた」、そんな感覚が近いような気がします。

最後に:ヒトの特性を知り、自分をコントロールする

何百万年もの人類の歴史の中で、ヒトは一つの生存戦略として「ホメオスタシス(生体恒常性)」という機能を手に入れました。熱が出たら正常に戻そうとする、病気になったら直そうとする、など体を「同じ状態に保つ」ようにするシステムです。

人はこのホメオスタシスがあるために「変化を嫌う」と言われています。何かを変えようと思い立った時に、それを実際の行動に移せる人は全体の20%、さらにその変化を継続できる人は全体の4%しかいないのです。変化をするということは、誰にとっても簡単なことではありません。

「ダイエットをする」「転職をする」など、内容は何であれ変化するということは、思考や行動の習慣を変えることを意味します。何十年も繰り返されてきた自分のパターンですから、新しい習慣を根付かせるには時間がかかることを心に留めておきましょう。ホメオスタシスはあなたを元の状態に戻そう、戻そうと働きかけますから。

エネルギーは「意図」が向かう方へと流れます。コンフォートゾーンを「出たい」ではなく「出る」と決意すること。そこから全てが始まるのではないでしょうか。

ーOutside of the comfort zone is where the magic happens.
魔法はコンフォートゾーンの外で起きる。

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