ひと昔前は「コーチをつけるのは経営者やリーダー」という認識が強かったように思いますが、コロナ以降多くの人が「自分の生き方」や「自分の働き方」について疑問を抱き、「より良い人生を歩む」ためにマイコーチをつける方がとても増えたと感じています。
この記事ではわたしのコーチ選びの経験と、業界の実情を踏まえ、「コーチを選ぶ時のポイント」について詳しく解説しています。もしあなたがマイコーチをつけようと思っていて、そのために役立つ情報を探しているなら、是非読んでみてください。
まず「Why(コーチングを受ける目的)」を明確にしよう
コーチ探しを始める前に、まずは「私は何のためにコーチングを受けるのか?」について考えてみましょう。
というのも、コーチングを受ける目的が「自分らしいリーダーシップのあり方を模索したい」なのか、「自己理解をとことん深めて、自分の操縦が上手くなりたい」なのか、はたまた「もっと楽に子育てできるようになりたい」なのかによって、求めるコーチが変わってくるから。
ここが明確であればあるほどコーチ選びが容易になりますし、もしかすると目的によってはカウンセリングやコンサルティングなど他の対人支援のサービスのほうが向いている人もいるかもしれません。コーチングを受けることで、何を実現したいのか、何を手に入れたいのか、じっくり考えてみましょう。
コーチ選びで意識したい4つのポイント
コーチを選ぶときに意識したいポイントはいくつかありますが、大前提としてコーチングのトレーニングを受けた人なら誰でも知っている「プロコーチに必要な3つの条件」があります。
- コーチングを提供している
- コーチングを受けている
- コーチングを学び続けている
サービスを提供している時点で①が欠けているコーチはもちろんいませんが、②と③の条件は意外と抜けやすいところ。特に②の「コーチングを受けている」つまり「コーチもマイコーチをつけている」という条件は、セッションの質を保つ上では欠かせない要素です。
コーチングはコーチの状態がダイレクトにセッションに影響するため、自分を常に良い状態にメンテナンスしたり、クライアントのロールモデルとしてチャレンジし続けるためにも、数十年のキャリアがあるベテランコーチでも「マイコーチ」をつけていることがほとんどです。
「マイコーチをつけているかどうか」は、コーチのSNS等の発信で確認出来ることもありますし、分からない場合は体験セッションで直接尋ねてみてもいいでしょう。
コーチ選びの際一つの指標になるのが、プロフィール欄にある「○○認定コーチ」という資格名だと思うのですが、現状日本ではスクールが発行する民間資格のみ。1日の講座で取得可能なものから、1年以上のコースを履修しないと取得できないものまで、素人目にはなかなか中身を判別しにくいかもしれません。
そのため近年プロコーチの間では、「国際コーチング連盟(通称ICF)の発行するグローバル資格」を取得することが一般的になってきています。ICF資格には、コーチング経験に応じて以下の3種類があります。
資格名 | トレーニング時間 | セッション経験時間 |
---|---|---|
ACC(Associate Certified Coach) | 60時間以上 | 100時間以上 |
PCC(Professional Certified Coach) | 125時間以上 | 500時間以上 |
MCC(Master Certified Coach) | 200時間以上 | 2000時間以上 |
海外のコーチ斡旋会社では、登録の一つの指標として「PCC以上のICF資格保持」を上げていることが多いので、セッションの質が気になる方はこちらを参考にしてみるのもいいでしょう。
また資格はあくまでもひとつの指標に過ぎず、資格は持っていないけれど素晴らしいコーチの方ももちろんいらっしゃいます。参考情報に留めておき、自分との相性を確かめることは忘れないようにしましょう。
コーチを選ぼうと思って探し始めると、1時間数百円から数十万円まで「セッション価格」の違いに驚く方もいるのではないでしょうか。一般的な日本での価格は、大体15,000円~25,000円/時間あたりがリアルなところだと感じます。
(※因みに2023年のICF調査によると、グローバルでの1時間当たりのセッション価格の平均は「244ドル(約36,000円)」)
おすすめは予算のちょこっと上、「少し払うのに勇気のいる価格」を狙うことです。なぜなら、自分にそれだけの投資をする価値があると認めることは、様々な側面にポジティブな影響をもたらすから。
とはいえセッションあたり数百円~数千円の安価な値段で提供されていて、とにかく経験を積みたいという新米コーチの方でも、とても質の良いセッションをされる方もいます。上手く見つければ、相場より安く良いコーチに巡り会えるチャンスもあるかもしれません。
コーチングは、コーチの人となりがそのままセッションにも現れるため、「コーチがどういった背景や強みを持っているか」は判断材料の一つになるでしょう。どんな分野でどんな人生を歩んできたのかという「経験」もそうですし、私が扱っているストレングスファインダーのような特定の「ツール」を活用できるコーチを選ぶのも一つの手です。
自分が課題だと感じていることと全く同じ経験をしている必要はありませんが、例えば経営者層を得意としているコーチに、子育てについてのコーチングを受けたいと願っているクライアントはミスマッチになります。
私はグローバルな視点を常に持っておきたいため、日本人とアメリカ人のコーチを二人つけていますが、この記事の最初でお伝えした「Why(コーチングを受ける目的)」が明確であればあるほど、マイコーチ候補を絞るのに役立つと思います。
コーチとの出会い方
実際にマイコーチ候補を探す方法としては、大きく以下の3つがあるかなと思います。
「Why(コーチングを受ける目的)」の解像度が高い場合は、特定のキーワード等を使った検索で、自分の希望に近いコーチを探してみましょう。XなどのSNSで気になるコーチを追いかけてみるのも手ですし、コーチング関連の情報を発信しているウェブサイトで気になるものがあれば、プロフィールをチェックしてみてもいいでしょう。
MentoやCotreeなど、自分に合うコーチをマッチングしてくれるサイトから探す方法です。コーチの経験によって異なる価格帯が用意されていたり、体験セッションを安く受けられる、口コミが豊富にある、など初めてコーチングを受ける方には安心のシステムがあるのが魅力です。
知り合いにコーチング業界に詳しい人がいたり、実際にコーチングを受けている人がいるなら、コーチを紹介してもらうのも選択肢のひとつ。リアルな体験談を聞けるでしょうから、参考になると思います。
私のマイコーチもそうなのですが、熟練のプロコーチはあまりマッチングサイトには登録していないことが多いので、「情報雑誌には載っていない口コミで有名なお店」のようなコーチを求めている方は、実際のコーチング体験者からも情報を集めてみましょう。
コーチを決めるまでの流れ
ここからは実際にマイコーチを決めるまでのプロセスで、意識したい点を挙げていきます。
文章から垣間見える人柄と、実際に会って感じるものは、同じこともあれば違うこともあります。まずはマイコーチ候補を3人ぐらいまで絞り、「体験セッション」や「単発セッション」を受けて実際に話してみましょう。
「セッションで一番大事にしていることは何か?」「得意分野は何か?」など、いくつかコーチに聞いてみたい質問を準備しておくのもいいかもしれません。受け身な状態で臨むよりも、より能動的に関わるほうが、コーチの人となりもよく見えてくると思います。
体験セッションは英語では「Chemistry Session(ケミストリーセッション)」とも呼ばれます。つまりはコーチとクライアントの間に起きる「化学反応」をお互いに確認する時間でもあるわけですね。
ポイントは、「心地よく話せるかどうか」よりも「安心して話せるかどうか」。自分の少し格好悪いところや人には言えない本音の部分など、ある意味「心地悪いことを話せる相手かどうか」が今後のコーチングの効果に大きく影響してくるからです。
コーチングに限らず、初めて会ったときに「なんかフィーリングが合う気がする」人っていますよね。自分の直感を信じて、一緒に走ったら自分を奮い立たせられそうだと感じる人を、ぜひ選んでみてください。
おわりに:コーチ選びは「軽やかさ」を大切に
人生で最初に出会った友人が「一生で最高の友人である」という人は決して多くないと思います。コーチングは「人と人」の関係性の中から生まれていくものなので、自分にとってベストなマイコーチに出会うまでには少し時間を要するかもしれません。
私もこの数年間で複数のコーチをつけてみて改めて思うのですが、それぞれのコーチに良さがあり、自分の人生のステージが変わることで、求めるコーチ像も変わっていったような感覚もあります。
どうぞ自分の感覚に素直に従って、「一緒に旅したら色々チャレンジ出来そう」そんな風に感じられるマイコーチに、あなたが出会えますように。
「コーチャブルとは何か?」コーチングが機能する人の5つの特徴