コーチングは単発のセッションでも大事な気づきを得たり、行動の後押しになることがありますが、一般的には「数か月にわたって継続すること」が重要だと言われています。
その理由は何だと思いますか?
コーチングはセッションとセッションの間に起こる
コーチングといえば、コーチとのセッションの時間を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際はセッションとセッションの間にもコーチングは起こっています。むしろ実際に行動を起こしたり継続する思考の中で多くの気づきが生まれる、この「間(in between)」の時間こそがメインで、セッションはそのための準備の時間といってもいいかもしれません。
セッションではよく「アハ体験」と呼ばれる気づきの瞬間があります。脳内にドーパミンが放出され、やる気が湧いてきて「何でも出来そう!」な気持ちになりますが、これは一時的なもの。確実に行動に移すためには、セルフコントロール力や困難を越えるための戦略が必要です。
自己啓発本を読んでその瞬間は自分が変わったような気がしたものの、実際には何も行動を変えられず振り出しに戻ってしまったという人は少なくはないでしょう。やろうと思った行動を実際に起こせる人は全体の20%、さらにそれを継続できる人は全体の4%しかいないとも言われています。
人は誰でも自分との約束は破ってしまいやすくても、他者に約束したことは守ろうとする傾向が強いものです。この「間(in between)」の時間にやったことや、そこから得た学びをコーチと次回のセッションで話すことが分かっていれば、「ちょっと取り組んでみるか」と一歩目が動きやすくなります。
気づきで終わらせず、継続的な行動に移し、自己変容へと確実に繋げていく。そのためにもこの「間(in between)」の時間があることが、とても重要なんですね。
習慣が変わるには時間がかかる
「理想が高すぎて自分にも他者にも厳しくしてしまう」「考えてばかりで行動に中々移せない」など、何十年にもわたって私たちの中で「無意識レベル」に繰り返されてきたパターンは、ちょっとやそっとのことでは変わりません。
コーチングでは「Shift(ずらす)」という表現をよく使いますが、「やってみる⇒結果を検証する⇒次のプランを練る⇒やってみる」を繰り返す中で、少しずつ自己変容が起きていきます。
確かに一回のセッションだけでも目の前の課題を解決することは可能ですが、コーチングの本当の価値は、似たような課題を引き起こしている思考や行動のパターンそのものにアプローチすることです。ひび割れて水漏れするコップにテープを貼れば一定の期間は水漏れを防げますが、時間が経てばまた水は染み出てくるでしょう。「源」を扱わなければ、同じようなことが繰り返されるのです。
「源」に辿りつくまでのプロセスは、玉ねぎの皮を一枚一枚向いていく作業にも似ています。毎回のセッションを通して、少しずつ核心に近づいていくのです。
「いつも自然体でいられるようになった」「今後の人生の軸となる価値観が見つかった」などコーチングを受けた方の感想によく表れるように、自分にとって本当に大切なテーマに辿りつくことで、コーチングはかけがえのないものをもたらしてくれるでしょう。
セルフアウェアネスが高まる
コーチングを継続で受けていると育ちやすい能力の一つに「セルフ・アウェアネス(Self-Awareness)」があります。セルフ・アウェアネスとは「自己認識能力」で、自分の思考や感情、強み/弱み、価値感、信念、ニーズ、などに対して意識的であり、それらを理解する能力を指します。
セルフ・アウェアネスを高めるには、二つの視点が必要だと言われています。一つ目は「内面的自己認識(Internal self-awareness)」、つまり「自分が自分をどう見ているか」という視点。もう一つは「外面的自己認識(External self-awareness)」で、「他者が自分をどう見ているか」という視点です。二つの視点のズレが少ない、バランスが取れている状態が精度の高いセルフ・アウェアネスです。
コーチングでは、「あなた自身はどう思っているのですか?」「今率直に言ってどんな感情がありますか?」などコーチからの質問を通して内省が促されるため、内面的自己認識がしやすくなります。
また「家族から今のあなたはどのように見えていると思いますか?」などの他者視点の質問や、コーチの洞察のフィードバックにより、外面的自己認識のプロセスがサポートされます。
セルフ・アウェアネスが高ければ高いほど「より自分の価値感に合った選択がしやすくなる」ことから、ウェルビーイングにも関連する能力として注目されており、より良い人生を生きたいと願っている人にとっては伸ばしていきたい要素の一つでしょう。
自己基盤が強くなる
「自己基盤(Personal Foundation)」とは、私たちが生きていく上での土台となる部分です。自分の「行動(Doing)」を支えている「あり方(Being)」と捉えてもいいかもしれません。情報が世界に溢れ何でも検索すれば「やり方」が見つかるようになった現代ですが、人によって同じやり方でも上手くいったりいかなかったりするのは、この「あり方(Being)」に差があるから。
コーチングでは人それぞれ種類は違えど、基本的には「チャレンジ」を扱っています。新しい行動を起こし、立ちはだかる壁を乗り越え、その経験を自分の学びや成長の糧とするプロセスの中で、少しずつ自己信頼や自己効力感が育まれ、この「あり方(Being)」が変容していきます。
私が通っていたアメリカのCoach Uではこの自己基盤に特化したクラスがあったぐらい、コーチングと自己基盤は密接な関係にあります。ある意味「生きる力」とも呼べるぐらい私たちにとって欠かせない要素ですから、ゆっくり育てていきたいものの一つです。
自己基盤と3つのメタファー(比喩)コーチングはコーチとの信頼関係が要
「初めて会った人でも、包み隠さず何でも話せる」という強者は、どちらかというと少数派でしょう。多くの人が初対面では程度の差こそあれ、ある程度の警戒心や保護本能を持って接する傾向があり、仮に自分のプラスの側面については流暢に話せたとしても、傷つきやすい部分や弱点を見せることには抵抗感を覚えるものです。
コーチングは「クライアントとコーチのパートナーシップから生まれる」という言葉の通り、その成果には両者の信頼関係が大きく影響しています。もちろん初見でも不思議と強い繋がりを感じられるコーチに出会うこともありますが、何年も組んでいるアイスダンスのペアが素晴らしいユニゾンを見せるように、人と人のあいだの化学反応は時間をかけてより進化していくものです。
セッション回数を重ねることによって生まれる安心感は、自分が本当は隠しておきたい弱い部分さえもさらけ出し、真の自己変容を起こしていくことへと繋がります。新しく出会った人を心から信頼するまでにかかる時間は人によって個人差も大きいですから、コーチングの成果を生み出す土台となる信頼関係をまずはしっかり築いていきたいですね。
信頼できるコーチを見つけるには
コーチングの成果はクライアントとコーチの関係性が大きく影響するため、まずはあなたが心から「この人に伴走してほしい」と思えるようなコーチを見つけることが大切です。
ブログやSNS等でその方の価値感や背景を知るだけでなく、実際に体験セッションなどで会ってみて印象を確かめましょう。また可能な限り一人だけではなく三人以上のコーチと話してみて、自分のニーズに一番フィットする人を選びます。「あなたがコーチングで一番大切にしていることは何ですか?」「あなたの得意分野は何ですか?」といった質問をしてみてもいいでしょう。
もし継続でセッションを始めて何回かやってみたたものの違和感があるなら、コーチを変えるのも一つのオプションです。一度始めたらそのまま継続しないといけない、なんてことは無いので、(信頼できるプロコーチなら契約解除については同意書に記載があるはずです)、自分が心から信頼できるコーチに出会うことを諦めずにいてくださいね。
さてコーチングを継続で受けるべき5つの理由について、あなたはどれが一番自分にとって価値があると思いましたか?
私もコーチングを提供するだけではなくマイコーチをつけていますが、私の場合はとにかく物事が前に進む&進んでいる感覚が常にあります。また自分の盲点=一人では中々気づきにくい部分に光を当てられるという点でも、貴重な時間だと感じています。
コーチングを継続で受けることに興味を持った方は、是非そのモチベーションが高いうちに色んなコーチに出会ってみてくださいね。実際に「触れる」ことで、さらなる道が見えてくるだろうと思います!