16年やっていたパティシエからコーチに転職した私が考える「やりたいことの見つけ方」について【前編】

子供の頃の夢を叶えてパティシエの世界に16年いた私ですが、「そんなに好きだった世界から、なぜコーチに転職したのですか?」という質問、よくいただきます。

率直に言うと、一番の理由は年齢的な限界を感じたから。パティシエの世界って見た目より体力勝負で、12時間立ちっぱなし、休憩は20分とかザラにあるので……。30歳を超えたぐらいから、ずっと続けていくのは難しいなあと感じていて、これからやりたいことについて考えるようになったんですよね。

「やりたいことが見つからない」というご相談をコーチングでも扱うのですが、今世界で起こっていることを機に、第二のキャリアや転職、独立を考えている方が増えていると感じています。ただ個人的には「本当にやりたいこと」って一生かけて探求するもので、「これさえやれば見つかる!」という絶対的なやり方は無いと思っています。

でも、今ちょっと迷子だという方が、ここからどこへ向かうのか、そのヒントになるかもしれないので、参考程度に私の実体験と「やりたいことの見つけ方」についての視点を書いてみます。

自分を棚卸する

「やりたいことが見つからない問題」について思うのは、昔に比べて、「圧倒的に選択肢の幅が広がった」ことが要因のひとつかなあと。職種もそうですけど、働き方も、会社に勤める、副業する、週末起業、ブログで稼ぐ、Youtuber、それはもう色んなやり方がある。

で、その広大な草原みたいなこの世界で、なにも目印無しに「やりたいこと」を掘り当てるのは中々難しいと思うんですよ。

私がパティシエの世界から卒業したのは、体力的な限界を感じたからなんですけど(見た目よりはるかに肉体労働)、ひとまず普通の生活がしたいというか、1日12時間立ちっぱなしの仕事はもう出来ないなと。

で、次のキャリアを考えるときに最初にやったのは「自分について知ること」。いわゆる自己理解です。これまでの人生を振り返って、それこそ子供のころから、どんなことが好きで、どんなことが苦手で、何に喜びを感じて、何が赦せなくて、みたいなことを、全部書き出しました。

この作業って、1人でやるのけっこう難しいんです。視点が固定しちゃうから。私の場合は、当時通っていたコーチングスクールで、自分の価値観の棚卸が出来たので、一石二鳥でした。コーチングって自分を理解して、さらに成長させていくものなので。

そこから出てきたのが「人の成長に関わる仕事がしたい」だったんですね。自分が新しい技術を身につけるよりも、後輩がシュークリームを綺麗に絞れるようになったとか、そっちのほうが幸せで。

とはいえ、「人の成長に関わる仕事」って、まあまあ選択肢がある。製菓専門学校の先生、研修講師、カウンセラー、子供の英語教室の先生、それはもう色んな職種について調べました。コーチもそのうちの一つだったんです。

色んな「やりたいこと」を触って比べる

じゃあたくさんある選択肢の中から何を選ぶのか?っていう話なのですが、コーチを選んだ、というよりも、たまたまそうなった、という感覚が近いんですよね。

私の中で一つ明確なことは、「やりたいことは触らないと分からない」ということ。これ結婚とも似ているなあと思うんですけど、「この人と一生生きていく」と結婚する時には皆思うワケじゃないですか。でもその後本当に一生添い遂げる人もいれば、3か月もしないうちに別れちゃうこともありますよね。

結婚する前に「絶対に上手くいく相手」かどうかなんて、分からないわけです。仕事も続けてみて初めて、見えてくることがあるかなと思うのです。パティシエの世界なんて正にそうで、女の子の憧れの職業No.1らしいですが、実際の現場はずっと過酷で、外側からは分からなかったですもん。

なので興味のあることを片っ端から、触ってみたんですね。カウンセラーにも興味があったので、以前ナイナイアンサーに出られてた心屋仁之助さんのBeトレに何度か出かけてみたり。製菓専門学校時代の恩師に、学校で教えるって実際どうなのか話を聞いてみたり。色んな企業で研修講師している人に話を聞いてみたり。

で、そこにいる自分をイメージした時にワクワクするかどうか?をいつも意識していました。ワクワクじゃなくて「稼げるかも」とか「これなら出来るかも」とかは、危険信号。それって「本当にやりたいこと」ではなくて、ある種の妥協だから。で、最終的に残った、続いた、のがコーチングだった。

因みに起業したのは、色々税金のこととか調べていて、「どうやら開業届をだしといたほうが良さそう」という結論に辿りついたため。あくまでも、通過点のひとつでした。

だから「やりたいこと」を見つけたい人は、頭の中で「これだ!」って思えるものが見つかるのを待つんじゃなくて、パートナーに例えるなら「ひとまず一緒に暮らし始めてみる」といいのかも。動けば動くほど、新しい視点が手に入るし、色んなことが見えてくるから

「上手くいくこと」と「やりたいこと」はベツモノ

「やりたいこと」って人によって、そもそも定義がちがっているかなあと思っていて。「あなたにとってやりたいことって具体的にどんなこと?」と聞くと、「自分が好きなことで、家族との時間が確保できて、今の給料と同じぐらい稼げて・・・」とか、返ってくることがあります。もうね、最初からそんなに上手くいくことがあったら、わたしが教えてほしい(笑)。

SNSを見ていると短期間ですごい稼げるようになったとか、色んな情報が流れてくるけれど、もちろん皆にも上手くいかなかった時期もあったわけで。インフルエンサーの方々はその時代の話も当然されているけれど、聞いてる人からすると「成功」にどうしても目がいっちゃう。そうすると「3か月で100万!」とか「1日1時間で時間もお金も自由に♡」みたいな、お手軽そうなワードにまんまとはまってしまうわけです。

「稼げる」とか「上手くいく」とかって、私の中ではノイズと呼んでるんですけど、これが一番「本当にやりたいこと」から遠ざかる要素かもしれないです。その先には「どうするべきか」=正解、のようなものがあって、自分の本音がそのノイズで聞こえなくなってしまう。

ストレングスファインダーと「やりたいこと」の関係

このウェブサイトでもストレングスファインダーで適職は見つからない、というのは色んな所で書いてますし、提供元のギャラップも採用に使うものではない、と明言しています。

ストレングスファインダーは元々、才能開発ツールなので、「得意なこと」を見つける鍵にはなるんだけど、得意なことは必ずしもあなたが好きなこととは限らない。周りの人から見ていて「絶対これやったら上手くいくのに!!」という才能があっても、本人がやりたいと思ってなかったら、どこかで無理が出て苦しくなったりするんですよね。

例えば私のかつての資質1位は共感性で、人の話を聴くことが得意でした。相手に寄り添っていけるので、カウンセラーとかセラピストという選択肢もあったんですけど、自己理解を続ける中でネガティブな感情への耐性が低いこと、夢を叶えるサポートのほうが自分がワクワクすることが分かって、コーチの道を選びました。

「得意で、好きなこと」と、「得意だけど、好きではないこと」が、混在しているので、自分を理解する鍵にはなりますが、資質を軸に「やりたいこと」を見つけようとすると、ちと難しいかなあと。自分を理解するためのツールとして使いつつ、資質を超えたところにある自分の本音に気づく。その上で、自分がやりたいことを実現するために、才能をどんな風に活かせるか考える。そんなイメージです。

→16年やっていたパティシエからコーチに転職した私が考える「やりたいことの見つけ方」について【後編】

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